ミュージアムサイエンス2002 vol.1
ミュージアムサイエンス2002
上野博物館遠景之図ジョサイア・コンドル(1852〜1920)筆 紙・水彩 62.1 × 97.1 cm明治14年(1874)Restorati on The surface of the painting was greatly soiled and deformed. The lining of thin washi(Japanese paper)on the back of thepainting had been mended with a strip of another washi. In thisrestoration,the soiling on the surface was removed mechanically with an eraser(clay type,oil free)while the soiling on otherparts was removed by applying moisture and using blottingpaper. Old lining was not removed,but the old mended portionwas first removed and newly mended with washi. Once thepainting had dried,moisture was reapplied and the painting waspressed. Finally,it was mounted on an acid-free,window-typefolder.Distant Viewof Ueno MuseumBy Josiah Conder(1852-1920)Watercolor on paper,62.1 × 97.1 cmMeiji period,dated 1874
作品について
明治13 年に竣工し、第2 回内国勧業博覧会の会場に使用された後、日本で最初の博物館である帝室博物館(現東京国立博物館)本館となった建物の水彩画である。コンドルは明治10 年に来日し、数々の洋風建築を手がけた著名な建築家である。
修理前の状態この水彩画は洋紙に墨入して彩色したものである。和紙による裏打ちが施されていた。当初、額入りだったとも考えられ、汚れや色落ちが著しい状態であった(写真1)。支持体である紙は、厚さ0.25 〜 0.28mm で、画面左下に透すかし(ウォーターマーク)があり、イギリスのワットマン製の洋紙であることがわかる。色は明るいクリーム色で四辺は刃物により切断されている。
画面は、鉛筆による下書きの上に透明水彩絵具による淡彩によって描かれている。紙の色を生かした薄塗りで、一部、噴水の水などに白色絵具を厚く塗って表現している。
作品は台紙へ袋状に周縁部のみで接着されていたため、周縁部以外の画面には縦方向の強い波打ち状のしわが多く生じていた(写真1、2)。
凸状変形部分では、こすれなどの摩擦により絵具層が離している。画面周縁部では接着剤や紙片の付着がみられ、また、絵具層の離も生じていることから、窓型マット台紙が装着されていたと思われる。光にさらされていた画面では支持体が黄変している。
画面・裏面ともに経年による汚れが付着していた。特に画面左の汚損が著しく、黒ずんだ状態であった(写真3、5)。画面の右辺中央には横方向に長さ約120 mm の破れが生じていたが、裏面側から厚手の和紙で繕いが施されていた(写真2)。(以下本文へ)