第13回「大学と科学」検証 日本列島
はじめに
旧石器時代以降に日本列島へ渡来し、そこで暮らした原人、旧人、新人たちをとりまいていた自然環境について考えてみます。
原人はその起源地であるアフリカを百数十万年前に脱出し、ジャワや中国南部には100万年前から70 万年前までに、アジアやヨーロッパの中緯度域には50 万年前までに達しています。日本列島では、宮城県築館町にある上高森遺跡で発見された約70 万年前の旧石器類が最古であることから、ここでは第四紀氷河時代に関する問題を主に取扱うことにします。
また、日本列島はアジア大陸の東端に、日本海を経て「逆くの字」型に発達している島弧であり、サハリンを経てロシアと、朝鮮半島を経て中国大陸と、そして南西諸島を経て東南アジアと島づたいに結ばれています。それゆえ、汎世界的な寒冷気候を生みだした極域の氷床拡大による、海水準低下によって出現した浅くて狭くなった海峡や陸橋をわたって、哺乳類や人類が大陸から移動してきました。そこで、汎世界的気候変動と陸橋にかかわった問題を取扱うことにします。
日本海はどんな海か
日本列島の内庭ともいうべき日本海は、いつ、どのような過程を経て誕生し、誕生後どのように変化しながら現在にいたっているのでしょうか。
そのことを知るためには、現場である日本海の海底に堆積した泥や砂、またそれらの下にある岩石類をとり、それらを直接調べたり、それらに含まれている化石などを解読する必要があります。世界中の海底から堆積物や岩石を採取して研究用に提供している掘削研究船“ジョイデス・レゾリューション号”
(図1)は、現在、南大洋で掘削研究中ですが、1999 年には10 年ぶりに日本近海にやってきます。
このジョイデス・レゾリューション号は、1989 年に日本海の6 地点から現在の日本海が誕生した新生代の中新世(2,400 万年前)以降にできた岩石と堆積物を連続して採取しています。その分析結果を図2 に示します。3 地点において500m 以上の堆積物を貫いて、海底基盤の玄武岩に達しました。玄武岩の放射年代と堆積物最下部の化石年代から、日本海が誕生したのは2,400万年前から1,700 万年前とされました。基盤21 日本列島の成り立ち3000300kmユーラシアシホタアリン韓国 本州北海道日本海盆日本海溝韓国海台対馬海盆大和海盆438435434441440439200030003003022997947967952000200100030003011000300020001000200797798大和海膨79948_45_40_35_127_ 130_ 135_ 140_ 145_NW水深=2,862m(YamatoBasin)797地点水深=2,811m(YamatoBasin)794地点水深=3,300m(JapanBasin)795地点水深=2,571m(OkushiriRidge)796地点玄武岩岩床・砂岩・シルト岩火山灰層の数(コア毎)水深=2,084m海底面 0m1002003004005006007008009001,0001,100T.D.903mT.D.654mT.D.762mT.D.1084m40Ar-39Ar age(Ma)E ED19.020.620.019.017.7(17.3)(17.1)(19.7)(23.7)799地点E(YamatoTrough)シルト質・粘土質軟泥QuaternaryQuat.QuaternaryQuaternaryPllocenePllo.PllocenePllocenePlloceneupper Mioceneupper Mioceneupper Mioceneupper Mioceneupper Miocenem.Miocenemiddle Miocenem.Miomiddle Miocenemiddle Miocene lower Miocenelower Miocene粘土 T.D.465mOp.AOp.CTC2C2C2C1 C1B B BAAAC1DDOp.AOp.CTOp.AOp.CT珪藻質シルト岩珪質頁岩・チャート珪藻軟泥図2 日本海における深海堀削地点Leg127 および128 で採取したコアの岩相区分