第14回「大学と科学」酸素が作る奇妙な物質−金属酸化物が拓く新しい科学−
はじめに
本シンポジウムの全体タイトルは『酸素が作る奇妙な物質−金属酸化物が拓く新しい科学』であり、「奇妙な」という言葉がついています。
なぜ奇妙なのか、どのような意味があるのかを説明していくわけですが、たんに奇妙というだけではなく、刺激的で可能性をもったテーマであることをご理解いただけるよう、その前座を務めさせていただきます。
私は「酸化物」と「強相関電子」というキーワードをもとに、(1)物質の多様性とその起源:電子(2)ミクロな世界と量子力学:粒子性と波動性(3)金属と絶縁体の違い(4)現代技術の担い手:半導体(5)金属酸化物:原子の軌道・ 強相関電子系とモット絶縁体:磁石・ More is defferent !について考えてみることにします。
宇宙・物質・電子この世はすべて物質で構成されていますが、そのすべては150 億年前に起こったビッグバンで始まります。
ちなみに、昔、ある哲学者は、世の中でもっとも巨大なものは人間の頭だと述べています。確かに、人間の脳は、概念としてすべてを含むことができます。
さて、150 億年前のビッグバン後、“宇宙の泡”が光速で広がったとすると、現在の宇宙の大きさは1028cm となります。
一方、この世の中でもっとも短い長さの単位は、宇宙の始まりにできた宇宙の泡粒です。
それは、プランクの長さ(10−33cm)と呼ばれ、重力常数とプランク定数と光速で決まります。
つまり、10−33cm と1028cm の間にすべてのものごとがおさまっています。このように、10の何乗かで示すとたいした数ではありませんが、そのなかにすべてがおさまっているわけです。
本シンポジウムでは、われわれの周囲にある物質について考えますが、これらの物質すべては原子を基本としています。原子の大きさは10−8cm 程度ですので、物質というときに問題になる長さの単位は、10−8 〜 1cm 程度となります。
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