第17回「大学と科学」化学:自然と社会へのかかわり
代表挨拶 野依 良治
Aセッション●
化学における右と左
野依 良治
化学は無から有を生む科学/分子における右と左/右手形分子と左手形分子の分子認識
右手形と左手形の分子をつくりわけることはできない!?/左右分子をつくりわける原理
不斉触媒反応の発見/不斉触媒反応の問題点/新しい不斉分子触媒を開発
不斉分子触媒反応の実用化/新しい物質の創造に向けて

Bセッション●
グリーンケミストリー
佐藤 一彦
はじめに/酸化反応とグリーンケミストリー/過酸化水素の製造法
環境に優しいナイロン原料の合成/過酸化水素を用いたアジピン酸の製造
過酸化水素を用いたアジピン酸の製造2/過酸化水素によるさまざまな酸化反応
グリセリン製造などへの応用/おわりに

Cセッション●パネルディスカッション
化学と社会
科学ジャーナリズムの視点から/新教育課程に期待できるもの/どんな学力が必要か
修復への道/有機合成化学者の役割/若い世代への期待/科学に両面性はあるか
生徒の心に灯をともす先生に/マスメディアと広い学問領域の連帯を
科学と科学技術の分離は可能か/知ろうとすることは本能
ジャーナリストとの総合的な学習を/マスメディアの責任と期待
マスメディアの役割/マスメディアを通じての議論の輪を育てる
大学生の心にどう灯をともすか/楽しく研究できる雰囲気づくりを
化学を恐れることなく、おおいに楽しむ

Dセッション●新しい機能物質と社会
有機分子がひらく新しいディスプレー
関  一彦
いろいろなディスプレー/液晶ディスプレーの特徴/液晶による光のスイッチング機構
液晶分子と高分子の界面をシンクロトロン放射光で調べる/分子を光らせるには
新しい発光方式:有機EL素子/電極と有機分子の界面を調べ、制御する
新しい有機電子デバイスを求めて/おわりに

分子がつくる新しい磁石
阿波賀邦夫
はじめに/常磁性と反磁性/有機磁石/光と分子磁性体
有機化合物における光誘起磁性
単分子磁石の開発/微小磁性体におけるトンネリング/これからの分子磁性
ナノ磁石研究へ

分子ナノテクノロジーによるヒューマン・ボディー・ビルディング
川合 知二
五感に相当するセンサを組み上げる/ヒューマン・ボディー・ビルディングとは
人体埋め込み型デバイスへの応用/ボトムアップ・ナノテクノロジー
分子ナノテクノロジーへ/分子ナノテクノロジーによる高機能化
DNA 半導体/ナノ分子構造の観察/ナノテクノロジーの医療への応用
おわりに

Eセッション●化学と生命
脳の化学―ヒト脳研究の新たな方法論
鈴木 正昭
はじめに/プロスタグランジンの魅力とは/ PG の革新的化学合成法を実現する
設計PG プローブにより脳内の中枢型IP 受容体を発見する
化学:自然と社会へのかかわり
設計PG、15R-TIC および15-deoxy-TIC は、神経保護活性を示す
分子設計により神経栄養因子活性をもつ新しいエノン型PG を発見する
生体内の分子の画像化法― PET 法について
PET トレーサーを用いたドーパミン受容体の可視化
15R-TIC のPET トレーサー化とヒト脳の分子イメージングに向けて/おわりに

金属元素が操る“いのち”
巽  和行
はじめに/金属酵素の中核を人工的につくる/神秘的で美しい金属酵素活性部位
水素や一酸化炭素を活性化する金属酵素/さまざまな機能を発揮する金属酵素
ニトロゲナーゼとは/ FeMo-co 骨格の人工合成への挑戦
モリブデン構築部品づくりからクラスター合成へ/ P-クラスター骨格の人工合成への挑戦
おわりに

特別講演:化学の目で見る植物の運動
山村 庄亮
植物の就眠運動/オジギソウの刺激伝達物質と就眠・覚醒両物質の発見
葉を閉じさせる物質(就眠物質)と葉をひらかせる物質(覚醒物質)
生物時計により制御される植物の就眠運動/就眠・覚醒両物質が作用する標的細胞
植物は、なぜ、眠るのか/高等植物の光屈性
光によって生成する生長抑制物質の構造と生物機能
青色光の受容体と膜蛋白質のリン酸化/光屈性のシグナル伝達

Fセッション●パネルディスカッション
化学の最前線
はじめに/超伝導物質の探索と化学/新しい超伝導体の開発
金属系超伝導体の探索と発見/医薬的に有用な海洋天然物の合成研究/
ET-743 の特徴と合成法/ET-743 の最重要中間体の高効率的合成に成功
金属錯体のナノ・バイオ・マテリアル/希土類元素の特徴/希土類蛍光錯体の特徴
ユウロピウム錯体による生体物質の測定/研究が成功した裏にどのような苦労があったか
新しい材料開発は、運しだい/化学者はよい商売だ
集中力と執念、体力、それにもまして、こだわりが/化学が好きだったことが一番
最先端領域の化学者に必要なものとは/MgB2 超伝導磁石は2 〜 3 年後に実用化?
ナノテクノロジーにおける自己プログラミングとは/化学者に統合条件が求められている?

Gセッション●化学の不思議
水の化学―多様な水の性質
大峰  巖
はじめに/水素結合ネットワーク構造の変化と水の特徴
水分子どうしの間に働く力と水素結合のネットワークの構造
水の運動の基本(集団運動)水素結合ネットワークの変化/水はいかに結晶氷に凍るか
どうして、水のpH は7なのか

毒と薬
上村 大輔
海洋生物3 大毒物/フグ毒テトロドトキシン/麻痺性貝毒サキシトキシン
シガテラ原因毒シガトキシンを求めて/パリトキシン/オカダ酸およびハリコンドリン
ハリコンドリンから制がん剤へ/シガトキシン/薬の宝庫としての海洋生物
抗がん剤としてのサンゴ死滅物質ナキテルピオシン/海からの究極の鎮痛剤

糖のなかまの働きと化学
楠本 正一
糖の構造−その多様性/細胞表層の糖鎖
細菌に対する防御機構・自然免疫を始動させる複合糖質