第17回「大学と科学」金属元素が拓く21世紀の新しい化学の世界
 周期表には100あまりの元素がありますが、そのうちの80ほどは金属元素です。金属元素のなかには30種類ほどの遷移金属があり、これらは、さまざまな酸化状態やスピン状態をとりえること、光吸収性や磁性をもつこと、その化学結合には柔軟性があり特異な方向性をもつことなど、物質の化学機能の多様性の源となる要素をたくさんもっています。遷移金属を含む錯体は、有機化合物や無機化合物が単独では実現できない多様な新しい化学機能をもつ優れた物質です。
昨今、優れた化学機能をもつ物質を設計し、人工的にその化学機能を発現させる素材として金属錯体が広く利用されるようになってきました。金属錯体は、化学の枠を越え大きな広がりをみせ、さまざまな分野に重要な影響と関連をもつようになってきています。
金属錯体とは
高校の化学B のどの教科書にも「錯イオン」という項目が1 ページほどにわたって記載されており、錯イオンとは「金属イオンに無機や有機の陰イオンや中性分子が結合したもの」と、定義されています。そして、錯イオンの例として、銀にアンモニアが2 分子結合して直線上に並んだ[Ag(NH3)2]+や、銅のアンモニア錯体([Cu(NH3)4]2+)、また正四面体型の亜鉛のアンモニア錯体([Zn(NH3)4]2+)があげられています。また、鉄イオンを中心とする正八面体の頂点にシアン化物イオンが配列した構造をもつ錯イオンがあり、鉄イオンは2価および3 価の状態をとることが可能で、それぞれの状態で色が異なることが紹介されています。金属錯体とは、錯イオンと同じような組成をもっていますが、必ずしも電荷をもつわけではなく、金属イオンに中性子、陽イオンなどが配位結合した化合物全般を含めた総称です。