第18回「大学と科学」オゾンのゆくえ−気候変動とのかかわりをさぐる−
オゾンのゆくえ― 気候変動とのかかわりをさぐる―
A セッション●特別講演
衛星観測で見る成層圏の姿
京都大学名誉教授 廣田  勇
はじめに/成層圏の発見/成層圏の観測の歴史/成層圏気象図の特徴/現代のさまざまな観測手段/衛星観測の特長と意義/極軌道衛星観測の特長/赤外放射の観測/成層圏循環と大規模変動/成層圏オゾンの分布/オゾンの垂直分布と季節変動/季節変化と年々変動/オゾンの将来予測/わが国の貢献と将来展望/まとめ/衛星観測で見る成層圏の姿


B セッション●気候変動はどのようにしておこるか
オゾンホールとは何か
九州大学大学院理学研究院教授 宮原 三郎
はじめに/オゾンホールの発見/成層圏オゾンの成因/オゾンの分布とその実現機構/総オゾン量の季節変動/オゾンホールの姿形/オゾンホールの成因/オゾンホールの変動と大気変動

気候変動をさぐる
九州大学大学院理学研究院教授 伊藤 久徳
はじめに/気候と気候変動/気候と大規模な大気・海洋の循環/大気循環と気温変動/海洋循環と気候変動/対流圏と成層圏/対流圏が成層圏へ及ぼす影響/成層圏が対流圏に及ぼす影響/対流圏と成層圏の相互作用/まとめ

突然昇温と気候
九州大学大学院理学研究院教授 廣岡 俊彦
突然昇温とは/突然昇温の生起機構/大規模突然昇温の生起条件/大規模突然昇温の生起頻度の変化と気候/突然昇温とオゾン/突然昇温の生起をみてわかること/突然昇温が及ぼす対流圏への影響/南極域での観測史上初めての大規模突然昇温/まとめと今後の課題

オゾンホールと気候変動
地球環境フロンティア研究センターポスドク研究員 渡辺 真吾
はじめに−オゾンホールとは−/オゾンホールと成層圏の気候オゾンホールと気候変動成層圏−対流圏結合変動/コンピュータシミュレーションの利用/オゾンホールと気候変動/大気大循環モデルの概要/数値実験の結果:北半球のオゾン破壊と気候変動/オゾンホールの気候への影響 1)気候値/オゾンホールの気候への影響 2)年々変動/まとめ/おわりに

C セッション●対流圏と成層圏
熱帯大気と物質の循環
京都大学生存圏研究所教授 塩谷 雅人
なぜ熱帯域が重要か−大気の子午面循環−/ブリューワーの考えた子午面循環/水蒸気の年変動/熱帯対流圏界面温度の年変動/地球大気における水蒸気の役割/水蒸気の特性/成層圏における水蒸気の増加トレンド/熱帯域における水蒸気観測/熱帯対流圏界面領域における水蒸気の変動/さらなる展開

コンピュータでさぐる物質の流れ
北海道大学大学院地球環境科学研究科教授 山孝治
成層圏の泉仮説/成層圏の泉か、排水口か/大気大循環モデルによるシミュレーション/成層圏は排出口/成層圏の排出口はなぜできるのか/流跡線解析による水蒸気の流れ/流跡線計算による水蒸気の流れ解析/脱水過程/エルニーニョにともなう水蒸気変動

熱帯の雲と循環
京都大学大学院理学研究科助手 西  憲敬
熱帯対流圏での循環/地域ごとの鉛直流研究の方針/赤道大気レーダーによる鉛直流直接観測/TRMM 衛星を使った上昇流域パターン形成の推定/熱帯域上層層状雲の形態/まとめ

準2 年周期振動とオゾン
東京大学気候システム研究センター教授 高橋 正明
はじめに/地球上空の大気の流れ/成層圏における物理量/準2 年周期振動とは/熱帯域の対流活動/波動の伝播/鉛直伝播する波の様子/準2 年周期振動のメカニズム/オゾンの準2 年周期振動

波動と物質の輸送
京都大学大学院理学研究科教授 余田 成男
第1 節大気波動
音波とは/重力波とは/プラネタリー波とは
第2 節物質の輸送と混合
移流とは/ランダム運動と秩序運動/乱流状態でない流れのなかでの流体粒子運動/カオス的混合(ラグランジュカオス)
第3 節地球規模の波の働き
オゾンホールと中緯度砕波帯/成層圏域でのカオス的混合/波に駆動される平均子午面循環
第4 節まとめと今後の展望

D セッション●物質の輸送― 大気波動のはたらき

衛星観測から見る水蒸気
京都大学生存圏研究所助手 江口 菜穂
なぜ、熱帯上部対流圏の水蒸気か/上部対流圏における水蒸気の特徴/上部対流圏における水平方向の水蒸気分布/熱帯対流圏界面遷移層/ TTL での脱水過程/衛星による水蒸気観測/熱帯域における季節内変動/季節内変動(MJO)による気温、風、水蒸気場の構造/季節内変動にともなうTTL 内の脱水機構/おわりに

高低気圧のはたらき
京都大学防災研究所助教授 向川  均
はじめに/天気図でみる移動性高低気圧/移動性高低気圧の構造/偏西風/傾圧不安定波/偏西風ジェットとストームトラック/ストームトラックの形成機構/大気大循環モデルを用いた数値実験/まとめ

E セッション●オゾンホールのゆくえ
コンピュータと数値シミュレーション
京都大学生存圏研究所助手 堀之内 武
はじめに/大気の数値シミュレーションに使う計算機/地球シミュレータ/大気の数値シミュレーション/大気の数値モデルの骨格をなす流体の基礎方程式/大気の数値モデル中の物理過程/大気化学の組みこみ/オゾンの化学反応による増減/数値シミュレーションの不確実性/まとめ

ピナツボ噴火とオゾン
地球環境フロンティア研究センターポスドク研究員 滝川 雅之
ピナツボ火山噴火の規模/火山ガスが大気に与える影響/研究の目的とモデルの概要/硫酸エアロゾルの扱い/ピナツボ火山噴火時の実験/硫酸エアロゾルの分布と時間変化/エアロゾルのオゾン分布と温度に与える影響/おわりに

オゾンホールを予測する手立て
国立環境研究所主任研究員 秋吉 英治
はじめに/化学輸送モデル/南極のオゾンホールの経年変動/北極におけるオゾン破壊と日本への影響/亜酸化窒素(N2O)の分布/北極オゾンの経年変動/おわりに

オゾンホールは何時消滅するか
国立環境研究所ポスドク研究員 永島 達也
オゾンホールの発見/ ODS がオゾン層破壊に影響するプロセス/オゾンホールの形成機構/オゾンホールの将来を決める要素/ODS に対する規制効果/オゾンホール縮小の要因/成層圏の気温予測/数値モデルを用いたオゾン層の将来予測/南極オゾンホールの将来見通し/北極域成層圏オゾンの将来見通し/他モデルの計算結果との比較