第19回「大学と科学」アルツハイマー病:治療の可能性を探る
Aセッション●基調講演
アルツハイマー病はどのようにして発症するか
東京大学大学院医学系研究科神経病理学教授 井原 康夫
痴呆の出現率/アルツハイマー病の病理:老人斑と神経原線維変化
老人斑が先か、神経原線維変化が先か/アルツハイマー病の病理は誰もがもっている
老人斑はAβ42の沈着から始まる/Aβ42はどのようにして産生されるか
痴呆の直接的な原因は何か/アルツハイマー病の治療法と治療時期

Bセッション●疫学調査から
アルツハイマー病患者は増加している
鳥取大学医学部附属脳幹性疾患研究施設脳神経内科助手 涌谷 陽介
はじめに/アルツハイマー病はごくありふれた病気
アルツハイマー病は増加している−世界の動向・日本の動向−/鳥取県大山町の人口構成
疫学調査の内容/大山町における痴呆症性疾患の動向/痴呆症性疾患患者さん増加の要因
早期診断への取り組み/痴呆症予防の取り組み

痴呆予防はどこまで可能か? ―利根プロジェクトからいえること
筑波大学臨床医学系精神医学教授 朝田  隆
生理的なもの忘れと痴呆の始まり/痴呆症の予防介入/利根プロジェクト1次調査
認知機能テスト例/記憶テスト例/ファイブコグの標準化/うつ病の時点有病率
3つの予防介入/利根町で実施している軽運動/運動介入の効果

食事とアルツハイマー病
自治医科大学附属大宮医療センター神経内科教授 植木  彰
アルツハイマー病の栄養学的問題点/栄養の考え方の基本
アルツハイマー病における栄養調査/野菜・果実によるアルツハイマー病の予防
魚によるアルツハイマー病の予防効果/脂肪酸の分類
n-6系多価不飽和脂肪酸とn-3系多価不飽和脂肪酸のバランス
総カロリーとアルツハイマー病/砂糖(精製糖)とアルツハイマー病/水分の重要性
栄養学的介入はアルツハイマー病の認知機能を改善させるか

Cセッション●アルツハイマー病の臨床診断
アルツハイマー病の早期発見と早期治療
東北大学大学院医学系研究科先進漢方治療医学教授 荒井 啓行
もの忘れ外来の受診動機−最近の動向から−/治療を求めて受診するケースが増加
痴呆を疑うチェックリスト/痴呆症が疑われる場合の医療機関への受診
診察の要点/一般的な検査/アルツハイマー病の治療薬
脳MRI画像とアルツハイマー病の診断/アルツハイマー病の予防
アルツハイマー病治療と漢方薬

機能画像による診断
埼玉医科大学国際医療センター核医学教授/埼玉医科大学病院核医学診療科長 松田 博史
なぜ、脳血流SPECTか/脳血流SPECTの画像統計解析の手順
アルツハイマー型痴呆の進行と脳血流分布の変化
軽度認知機能障害の時期の脳血流SPECT所見/画像統計解析の個々の症例への臨床応用
アルツハイマー型痴呆の進行予測と脳血流SPECT所見/脳血流SPECTによる痴呆の鑑別診断
MRIによる画像統計解析/治療効果の評価/まとめ

MRIによる診断
東京医科大学医学部老年病科助教授 羽生 春夫
はじめに/画像検査/アルツハイマー病の画像診断のポイント
海馬病変/大脳後方連合野(側頭頭頂葉)病変/脳血管性痴呆との鑑別
コリン作動系ニューロンの障害/まとめ

アルツハイマー病の生物学的マーカーについて
岡山大学大学院医歯学総合研究科神経病態内科学助教授 東海林幹夫
痴呆症の診断/専門医が求めるアルツハイマー病の生物学的マーカー/Aβとタウの測定法
アルツハイマー病の生物学的マーカーの進歩/ADインデックスの大規模多施設共同研究
リン酸化タウはより優れた生物学的マーカーか?/早期診断は可能か?
MCIからアルツハイマー病の発症を予測する/アルツハイマー病は脳内Aβ42の代謝障害か?
血漿Aβ40、Aβ42は生物学的マーカーとなるか?

Dセッション●アルツハイマー病の病理
アミロイドβタンパク質産生の異常がアルツハイマー病につながる
大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室講師(医学部) 大河内正康
はじめに/アルツハイマー病とは/根本治療と対症療法
脳の機能性変化、器質性変化、シナプスの可塑性について/アルツハイマー病の対症療法
病気の原因をどのように探すか/わずかな家族性疾患研究の重要性
原因遺伝子の変異に共通する「新規獲得機能」を探す
家族性疾患研究の成果が孤発性疾患の治療へ飛躍する
分子レベルでみるアルツハイマー病を引き起こす遺伝子とそのタンパク質
アルツハイマー病を引き起こす3種の原因タンパク質の機能的な関連
アルツハイマー病を引き起こす3種の遺伝子上のどのような部分に病原性変異は起きているのか
アルツハイマー病の原因となる遺伝子変異に共通する「新規獲得機能」
産生されるAβの長さが部分的にかわると、どのようなことが起こるか
Aβはどんなものか/「Aβ様ペプチド群」を診断に役立てる/まとめ

アミロイドβタンパク質の凝集
国立長寿医療センター研究所副所長 柳澤 勝彦
Aβはなぜ、脳のなかで凝集するのか/種ができているらしい
脳のなかで種を確認/GAβとAβ凝集体形成の作業仮説/GAβの構造変化を確かめる
Aβ-GM1結合体の構造変化を確認/AβとGM1はなぜ結合するか
アポE4とGM1、Aβ凝集/病原形成の空間的特性の説明/種の発見から治療薬開発へ

神経原線維変化と神経細胞脱落
(独)理化学研究所脳科学総合研究センターアルツハイマー病研究チームチームリーダー 高島 明彦
神経原線維変化とタウタンパク質/アルツハイマー病の危険因子と神経原線維変化
脳の働き/神経原線維変化の進行とアルツハイマー病
老人斑と神経原線維変化の関係から正常老化とアルツハイマー病を考える
アルツハイマー病は老化の加速した状態/脳の早期老化マウスの作出
神経原線維変化をどうすれば防ぐことができるか/まとめ

Eセッション●予防、治療法の開発
日本人の全ゲノムスキャン ―遺伝的危険因子を求めて
新潟大学脳研究所附属生命科学リソース研究センター助教授 桑野 良三
ゲノムとは/ゲノムには膨大な情報がつづられている/アルツハイマー病でのゲノム解析の意味
感受性遺伝子の探索/大規模収集された検体は均一か/遺伝子タイピング
1塩基置換の意味と第10番染色体の解析/遺伝子タイピングシステム
ゲノムワイド検索の戦略/全ゲノムスキャンでアルツハイマー病克服の扉が開くか
タッチパネル式コンピュータを用いた痴呆症スクリーニング法の意義と

痴呆予防検診への活用
鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座教授 浦上 克哉
アルツハイマー病はありふれた疾患/患者さんと家族の話の相違
痴呆発見のチェック項目/タッチパネル式コンピュータを用いたスクリーニングテスト
タッチパネル式コンピュータを用いたスクリーニングテストの利点
痴呆症スクリーニング機器の有効な活用法/痴呆予防検診と痴呆予防教室への活用
スクリーニング後の対応/まとめ

塩酸ドネペジルの研究開発戦略 ―その光と影
京都大学大学院薬学研究科教授 杉本 八郎
創業者の夢/青春時代の夢/α受容体遮断作用に基づく降圧剤の開発
抗痴呆薬の開発を目指す/抗痴呆薬の開発を目指す/脳血管性障害後遺症改善薬での失敗
アルツハイマー病の薬物治療/アルツハイマー病の危険因子/アルツハイマー病のコリン仮説
コリン仮説からの創薬アプローチ/AChE阻害剤/アリセプトの開発に着手
セレンディピティーその1/セレンディピティーその2/世界最強の化合物を発見
再出発を誓願/セレンディピティーその3/アリセプトによる記憶改善効果
塩酸ドネペジルの臨床試験/改善報告/感動した1冊の本/おわりに

アミロイド生成阻害薬開発の展望
京都薬科大学創薬科学フロンティア研究センター教授 木曽 良明
生物分子の誕生/世界の伝承薬物とドラッグの発見・開発/タンパク質分解酵素
アミロイド前駆体タンパク質のプロセシング/APPの切断部位のアミノ酸配列
β-セクレターゼ阻害剤の開発/APPのアミノ酸配列に基づいたBACE1阻害剤のデザイン
フェニルノルスタチンを含むBACE阻害剤/低分子型BACE阻害剤
γ-セクレターゼ阻害剤の開発/今後の課題と展望

ワクチン療法の展望
国立長寿医療センター研究所所長 田平  武
アルツハイマー病とは/瀰漫性老人斑と古典的老人斑/老人斑の形成機序
老人斑の形成とアセチルコリンの減少/アルツハイマー病の根治的治療薬−ワクチン療法−
ワクチン療法の可能性/ワクチン療法のメカニズム/Aβワクチンの臨床試験
ワクチン療法による老人斑の変化/飲むワクチンの開発/飲むワクチンの今後の予定

演者紹介