よみがえる被災火焔型土器
刊行によせて
九州国立博物館館長 三輪嘉六

 平成十六年十月二十三日に発生した新潟県中越自信では多くの人命が犠牲となり、十万人の避難民がでる等、その被害は甚大でした。文化財では、十日町市の国宝・笹山遺跡跡出土火焔型土器群等多くの被害がありました。
 文化財が被災した場合、指定文化財については文化庁や所管する地方自治体の補助事業もしくは自主事業として修復が行われることになっています。阪神・淡路大震災の折は、このように指定文化財の扱いについては一定の保護措置が取られましたが、未指定文化財の扱いが大きな問題となりました。そのために兵庫県教育委員会の要請に基づき、文化庁の呼びかけによって文化財関係学会等を中心に、文化財レスキューを実施しました。
 今回の新潟県中越地震では指定文化財以外の扱いについて、文化庁美術学芸課長名(平成十六年十一月二十九日付)で文化財保存修復学会に協力要請がなされ、この要請に基づき同学会により現地調査が実施されました。調査には国立博物館の保存修復の専門家も参加し、協力・助言を行いました。
 こうした中で、津南町から同学会宛に、修復に関する協力依頼が平成十七年一月四日付で提出されました。折しも九州国立博物館では、当該文化財を借用し展示する計画があった矢先でもあり、これらの経緯をふまえ学会から九州国立博物館に対して、同町への協力要請がありました。九州国立博物館では修復後に文化交流展示室で展示公開し、併せて修復記録を公刊することにより博物館の社会的使命を果たすこととし、館としてこの修復事業に当たったわけです。災害時に博物館がなしうる緊急避難所としての機能に加えて、展示と結びつく保存修復機能についても、社会へ向けて活動する一環として位置付けることにより、一歩踏み込んだ対応をとりえたものと自負しています。
 最後に、修復の実際については、多くの関係者のご協力を得たことに御礼を申し上げたいと思います。