第19回「大学と科学」ここまで進んだ日米の都市地震防災
A セッション●強震動予測と地盤の地震危険度評価
都市域を襲う破壊的地震の際に、どのような揺れがあるかの予測法
・京都大学防災研究所教授 岩田 知孝
はじめに/地震と地震動/地震の理解と地震動予測/地震と地震動(強震動)/地下構造を調べる/想定地震による地震動の予測例/日本近辺の震源分布/海溝型巨大地震の震源域/今後の課題

地盤の液状化の予測法と地中構築物の耐震性を向上させる方法
早稲田大学理工学術院教授 濱田 政則
液状化現象とは/液状化の被害事例/液状化地盤の側方流動/液状化・側方流動の研究の歴史と日米共同研究の目標/液状化の予測手法/液状化と側方流動に関する日米共同研究の方法/基礎杭に作用する流動外力に関する共同実験/側方流動に関する杭基礎の耐震設計法/側方流動による地盤変位の予測法の研究/2004年新潟県中越地震による液状化

B セッション●構造物の地震応答性能の向上
建物の地震時における性能として求められるものは何か、さらにその性能を満たす設計の方法
東京大学地震研究所教授 壁谷澤寿海
地震による建物の被害/建築基準法と地震被害/耐震設計と地震被害の関係/建物の耐震性能と余力/性能基盤型耐震設計/耐震性能の評価指数/復元力特性と限界状態/耐震診断・耐震補強/ピロティ建物の補強法/ 3次元震動台による検証

構造物の耐震性を高めるための最近の技術
京都大学防災研究所教授 中島 正愛
はじめに/なぜ日米共同研究か/被害・設計・施工の相違/日米接合方法の比較/より高い耐震性能を付与するための技術−履歴ダンパーの利用/座屈拘束筋かいの実大実験/なぜ大型(実大)構造実験か/実大実験と縮小模型実験/実大実験と数値解析/実大3層鋼構造骨組の崩壊実験/大型構造実験への期待とそれにかかわる最近の日米の動向

C セッション●都市施設の高度耐震技術の開発
先端技術および高機能材料を用いた都市施設の耐震性向上技術
東京工業大学大学院理工学研究科教授 川島 一彦
交通施設の地震被害/都市の地震被害を軽減するための手段/高性能ダンパーを使った橋の地震応答制御/セミアクティブコントロールによる減衰制御/解析シミュレーション/ 2段階摩擦型ダンパーの効果/ MR ダンパーの特性/MR ダンパーのPID 制御/まとめ

構造物の健康管理と損傷度の検出法
京都大学防災研究所教授 鈴木 祥之
はじめに/構造物の損傷検出と健全度のモニタリング技術の開発/東本願寺御影堂のヘルスモニタリング/伝統木造構造物の柱歪計測/伝統軸組の変形性能/伝統構法の組物/木造住宅の被害状況/木造住宅の耐震性能評価

D セッション●パネルディスカッション
耐震技術の現状と日米共同研究として何が新しくわかったのか
千葉大学工学部デザイン工学科教授 小谷 俊介
京都大学防災研究所教授岩田 知孝
早稲田大学理工学術院教授濱田 政則
東京大学地震研究所教授壁谷澤寿海
京都大学防災研究所教授中島 正愛
東京工業大学大学院理工学研究科教授川島 一彦
京都大学防災研究所教授鈴木 祥之
地震調査研究推進本部が発表した地震発生確率/宮城県沖地震で予想させる液状化被害/側方流動の発生機構/上越新幹線の脱線と液状化の因果関係/液状化が起こらなくても新幹線は脱線する/構造物の耐震性能と設計基準/地震動シミュレーションの信頼性/非構造部材の設計基準/土木設計における新しい設計体系/建築構造の設計思想/構造物は耐震性を向上させるだけでよいのか/復旧時にライフライン優先か道路網優先か/設計基準をめぐる土木・建築の思想背景/橋梁応答とダンパーによる補強/臨海部コンビナートの耐震化/大阪平野で3km、仙台平野では2km 弱/構造物の健康管理をどう浸透させるか/木造住宅の耐震診断には注意を/大型震動台の建設を/直下型地震での高速鉄道の脱線は免れえない/地震発生時の新幹線の対応/宮城県沖地震の東北新幹線への影響/斜面崩壊の危険地域の公表を/地域の特性に適した耐震設計を/新潟県中越地震の地震動/建造物内への地震計の設置を/地震長期評価部会の考え方/巨大地震は連動するか

E セッション●都市地震災害制御のための高性能社会基盤システムの構築
都市の地震時における安全性を評価するための方法論
京都大学防災研究所教授 岡田 憲夫
阪神・淡路大震災から学ぶ都市づくりの知恵/安全で安心できる都市づくりのための五層モデルの提案/都市の未来史を想像し、創造するための総合的な災害対策づくり/東海・東南海・南海地震に事前に対応し、備えるには

社会基盤施設のリスク分析と先端技術の応用
神戸大学都市安全研究センター教授 沖村  孝
研究の目的/地盤データベースの構築/地盤データベースを利用した木造構造物被害分布の研究/高密度地盤情報システムを用いた都市液状化危険度の評価/リアルタイム液状化検知と側方移動量推定のためのセンサの開発/断層近傍地震動に対するライフライン挙動解析/GIS を利用した地震災害危険度細密評価ツールの開発/人の空間分布GIS データベースの構築と人命救助活動シナリオ検討のケーススタディ/リモートセンシングによる地震被害把握/おわりに

F セッション●都市地震災害に関する危機管理の比較防災論的研究
都市地震災害過程のモデル化と総合的な損失の定量化
京都大学防災研究所所長/教授 阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター長 河田 惠昭
新潟県中越地震で活かされた阪神・淡路大震災の教訓/災害における社会性の増大/外力の大きさと被害拡大要素/都市震災対策の誤り/近年に発生が危惧される巨大地震災害/何が都市を災害に対して脆弱にするか/防災・減災の目的/防災・減災の戦略/防災・減災の主役は誰か/建物被害の程度と死者発生/被害人口と最大応援要因数/誰を避難者と考えるか/大都市大規模災害からの長期的な復興過程/阪神・淡路大震災の復興過程の定量化/おわりに

マルチメディアによる地震災害の事後対応過程の検討
東京大学生産技術研究所都市基盤安全工学国際研究センター教授 目黒 公郎
1. はじめに/ 2. 災害状況を具体的にイメージできるようにするために/3. 災害状況イメージ力を高める各種のツール・シミュレーションの紹介/4. 次世代防災マニュアルの整備/ 5. おわりに

G セッション●パネルディスカッション
都市の安全性はどのように評価されているか
北海道大学大学院工学研究科教授 鏡味 洋史
Topping Associates International Kenneth C. Topping
京都大学防災研究所教授 林 春男
時事通信社Web 編集部次長 中川 和之
内閣府参事官補佐 佐藤 弘之
社会福祉法人南郷町社会福祉協議会事務局長(宮城県) 松田 彰洋
都市の安全性評価−安全・安心な社会とは−/都市生活の質の向上を目指して/新しい評価法の確立を目指す/ PDCA の実施/達成目標の明確化を/都市の安全性に関する現状と問題点−マスコミの立場から−/マスコミの役割/ニュースとは何か/平時に何をしているか/災害の情報は地域にあり/専門家は何ができるか/都市の地震対策−首都圏直下地震に対する取り組み−/首都地域の特徴/首都直下地震の切迫性と政府の取り組み/首都地域における地震災害の課題/首都直下で発生する地震のタイプ/現場からの報告−宮城県北部連続地震−/災害ボランティアセンターの重要性と担い手/住民自身の公助・共助・自助の役割と限界/政府も戦略目標を設定して取り組みを/メディアのステークホルダーとしての役割を/ボランティアのあるべき姿