ものづくり 化学の不思議と夢
開会挨拶
巽 和行 名古屋大学

 文部科学省の科学研究補助金の中に、特定領域研究という項目があります。この領域研究は、統一された重要な主題のもとに関連分野の研究者が集まり、共同・協力して研究を推進するプログラムです。私どもは、平成14年度から昨年度まで4年間にわたり、「動的錯体の自在制御化学」のテーマのもと100名余りの優れた研究者が集い、活発な研究を進めてきました。本日の公開シンポジウムでは、私どもの研究活動の成果を皆様にご披露するとともに、化学の「ものづくり」の重要性を知っていただくべくプログラムを組みました。

 化学研究は、我が国が非常に得意とする研究分野で、これまでに数多くの世界をリードするすばらしい成果をあげてきました。化学は、分子レベルで「ものづくり」を行う学問で、化学反応でさまざまな有用で重要な化合物を作ります。実は、我々の身体を作り、生命活動を支えているのも化学反応です。本特定領域研究では、特に周期表の中段から下段にある比較的重い元素に注目し、その反応を制御することを第一の目的としています。これらの重い元素は、非常に興味深い性質を持っており、皆さんの生活にも直結した機能性材料を生み出しますし、反応を効率よく進める触媒の原料としても重要です。しかし、重い元素を含む化合物の反応を制御して、分子レベルの「ものづくり」を自在に行うことは大変困難です。その困難に挑戦し、反応を制御する新しい化学を展開することを、本特定領域研究でめざしました。

 本研究に参加された100名余りの研究者は、共通の理念と目的のもとに研究を推進してきました。この公開シンポジウムにおいて、皆様にその成果を問うことになります。どうか、厳しい批判をいただければと思っています。本シンポジウムでは、中堅研究者による研究成果の報告に加え、若い研究者にも発表に参加していただきました。今日の二つ目のセッションと明日のセッションで、将来を担う若手化学者にお話しいただきます。皆様とともに将来への夢を膨らませるべく、私もこれらの人たちの講演を楽しみにしています。どうかご期待ください。
 さらに加えて、卓越した研究成果をあげ、これまで日本の化学を先導してこられた3名の著名な先生方に特別講演をお願いしています。高い見識をもたれた、すばらしい先生方のお話をお聞きして、「ものづくり化学の不思議と夢」に思いを巡らし、化学の過去、現状、そして将来について、皆様と一緒に考えたいと思っています。どうかよろしくお願いいたします。

 簡単ですが、代表者の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。