文化財の保存と修復 10−博物館の役割と未来
開会挨拶

文化財保存修復学会会長

三輪 嘉六



 台風一過、青空のもとでシンポジウムが開催できましたことをたいへん喜んでおります。また、早朝から大勢の方におみえいただき感謝申し上げます。

 この『文化財の保存と修復シンポジウム』は今回で10回目になります。記念の節目のときとなります。これまで東京や京都を中心として開催しております。その基本的な心は、「文化財をどう保護し、どう継承するか」ということです。私どもの学会は、その基本的な部分の活動をいろいろなかたちで進めているつもりですが、文化財の保存と修復についての調査や研究の成果を少しでも多くの方に知っていただこうという趣旨で開催してまいりました。

 ご承知のように、昭和25(1950)年に施行された『文化財保護法』によって、初めて「保護」という用語を用いるようになりますが、この保護には2つの大きな意味があります。つまり保存と活用です。

 博物館は長く、文化財を活用する場として対応してきました。その一方で、文化財を公開する施設としてのみ博物館が存在してよいのかという議論もありました。このことについて、私は保存においても大きな役割があるという思いをもっております。そのことを今回は、「博物館の役割と未来」をテーマにして、皆さん方にいくつかの問題点、成果を問いかけることを試みてみたわけです。

 プログラムをご覧になるとおわかりのように、たいへんもりだくさんの内容ですが、是非一日、いろいろな意味で学んでいただき、私どもとともに考えていただきたい思っております。

 最後になりましたが、当学会は昭和8(1933)年にスタートして80年近い歴史をもち、いろいろな変遷を経て現在の「文化財保存修復学会」という名称で今日に位置づいております。会員数は1,000名を超えました。そのなかで、会員どうしの親睦だけの会ではなく、実際に文化財の保存や活用について、いわゆる実学の面で社会にも貢献していこうと思っております。そうしたことをあわせて紹介しまして、開会の挨拶とさせていただきます。今日一日よろしくお願いいたします。