ブレインサイエンス・レビュー2009
伊藤正男  (財)ブレインサイエンス振興財団 理事長


 2009年に入って、21世紀になってからの変化がいろいろとみえてきたような気がします。脳科学の広い領域で、同時多発的にさまざまなことがおこり、その一方では異なる分野間での相互作用が盛んです。こういう変化は意識されないことも多いのですが、このレビューを編集するにあたっては痛感されました。以前のように分子、細胞、回路、脳、行動という階層分けがだんだん難しくなってきて、それらをいろいろな幅で横断しながら問題が提起され、解が求められる場合が多くなりました。この巻でも神経回路に重心をおいて、一方は分子へ、他方は認知機能や行動へと考察を広げた報告が少なくありません。現在の段階における脳科学のあり方を示す興味深い傾向と思います。
 本書では、2006年度の塚原仲晃記念賞を受賞された宮脇、銅谷両氏を始め、その他11名のブレインサイエンス研究助成金受領者に執筆いただきました。30代、40代の心身気鋭の研究者の研究現場からの報告として世に送ります。