脳を知る・創る・守る・育む 11
開会挨拶
NPO法人脳の世紀推進会議理事長
伊藤 正男

 皆さまおはようございます。今回もまた大勢の方々にご参加いただき、主催者としてうれしい限りです。第一回当初から、急速に進歩する脳科学の現状を、年に一度一般の皆さまに向けてご説明するという趣旨で進めてまいりましたが、今年もそのような方針で企画しました。
この脳の世紀シンポジウムが始まってから十六年もたったとは驚きですが、この間の進歩は大変目覚ましいものがありました。今回のシンポジウムが開かれている二〇〇八年は、脳の研究の一つの転機だと感じられます。国際会議では技術の問題が頻繁に取り上げられます。脳を研究する現在の技術はまだまだ限られており、これが進歩しなくては研究が進みません。技術の進歩によって大変な進歩が得られるはずだとの期待から、研究技術の開発がさかんです。たとえば、分子レベルから脳レベルに至るまで、さまざまなレベルで起こる活動を視覚化する試みがさかんです。同時に、これまでの多岐にわたる研究の成果をデータベースにまとめあげモデル化して、脳の問題を包括的に把握する努力がなされています。
 本日の講演では、最初に佐々木先生が特別講演として、仏教から脳科学をみる、また逆に脳科学から仏教をみる深遠な考察をお話しになります。脳科学の側からは、伊佐先生が損傷した脳、脊髄の生存戦略について話されます。さらに、西條先生はニューロ・ソーシャルサイエンスというテーマで、地道な脳科学的研究を基礎に発展してきたニューロエコノミクスの分野について話されます。貫名先生は困難な神経変性疾患の治療に向けたタンパク質の品質管理の話を、最後にブレイン-マシン・インタフェースという新しいアプローチを櫻井先生がお話しになります。
科学は「きり」がありませんが、進歩につれて目標そのものが次々と展開し、研究の次元が上がり、理解がより包括的に、より凝集的になっていきます。今年は、そういった大きな流れの一つの転換点ではないかと私は感じます。本シンポジウムは、そういった脳科学全体の雰囲気を皆さまにお伝えすることも大きな目的の一つです。どうぞ今日一日、ご清聴いただき、今後とも脳科学の推進にご援助賜りますようお願いいたします。