文化財の保存と修復 11−文化財をまもる人たち
開会挨拶
文化財保存修復学会副会長
増田 勝彦

 皆さまおはようございます。今日は天気もよく散歩日和ですが、本会におでましくださりありがとうございます。文化財保存修復学会は先月11 月11 日、1 が4 つ並ぶ大安のめでたい日に、有限責任中間法人として認可され、新しい時代を迎えることになりました。
 文化財保存修復学会は、名前の通り、先の世から現在に受け継いだ文化財を、次の世代、将来に受け渡すためにどのようなことができるかを、特に自然科学的、技術的な面から追求する人たちが、その成果を発表しあい、文化財の保存にどのようなことができたか、できるか、どんな問題があるかといった情報交換を図るための学会です。
 社会に認知された文化財を扱うわれわれは、当然社会とのつながりが強くなっています。
 本日は、各分野の専門家の先生方にご出席いただき、文化財をまもるためにはどんな問題があるか、人、モノ、組織、体制、もちろんお金についても、それぞれの分野からお話をしていただくことを予定しております。
 ここで皆さまが、この学会が社会にどんなことができるかを示してくれるものと期待されているだけではなく、本学会がこれからしなくてはならないことを話し合う大きなきっかけになることを願っております。オバマ大統領は「Yes we can.」といいました。「We can.」となるかどうかは、本学会の私どもと、ここにお集まりいただいた文化財に関心のある皆さまとの共同作業にかかっています。文化財がもっている文化そのものを認める私たちの力、これまで伝わってきた美しい文化のもつ力を認める私たちの力がなくなると、文化財そのものを社会が認めなくなります。そうすると、文化財の一般認識と価値づけが下がり、それに対応する技術者も、ものづくりも貧弱になっていきます。
 現在日本に求められていることは、経済で発展するだけでなく、2000 年来続いてきた日本の文化を再認識できる力をいろいろなところで育てていくことだと思っております。このごろは金融危機、経済危機だけが声高に叫ばれ、文化の衰えについて政治家の話が及ばないことに大変危惧をもっています。
 組織の公開性と経済的な効率追求を目指した入札制度が文化財保存の現場にもはいってきました。会計的なよい点、また金融的な公開性について非常に効果があると認識されていますが、文化を伝えることに関して、どれだけの弊害がでてくるかも、今日の話題にでてくるかと思います。
 今日一日、皆さんと一緒に文化財をまもり育て、伝えることはどのようなことになるのか、現実問題としてどんなことがあるのかを話し合っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。