日本美術品の保存修復と装コウ技術 その四
2004 年8 月31 日まで文化庁美術学芸課に在籍して修理現場にも親しくかかわらせていただきました。文化庁の在籍期間は14 年ほどとそれほど長くありませんが、思い起こすと、渡邊明義・前文化財研究所理事長が私どもの先輩として文化庁の調査官の時代から、修理の哲学というか考え方の基礎を現場の皆さんと形成され、それを引き継ぐ時期に携わりました。私の印象からいうと、ここ10 年ほどで修理に対する問題意識が進展した気がします。それは重要文化財の指定作業と関連しています。私自身も重要文化財の指定のとき、かなり状態の悪いものも積極的に指定していこうと努力しましたが、その結果、指定してすぐ、保存状態の悪い作品を修理する必要性が生じます。ところが、修理可能かどうかを考えて指定したわけではないため、これまで手がつけられなかったような作品を修理しなければならない局面が多々起こりました。その具体例として、少し美術史学的な話になるかもしれませんが、情報量の視点から絵画修理を考えてみます。(以下、本文へ)