脳を知る・創る・守る・育む 13
開会挨拶
  金澤 一郎

● I 章●特別講演
災害に震える脳
  山折 哲雄(哲学者・宗教学者)

● II 章●脳を知る
創造性と知性の進化の神経生物学
  入來 篤史(理化学研究所脳科学総合研究センター)
進化する創造/神経系から脳/神経情報処理と脳の発達/上位中枢と人間のシンボリックシステム/道具使用と脳の発達/体性感覚と視覚の統合/人間の脳における内的表象の階層性と成長/脳の階層性と道具使用/視点変換/自己客観化と脳/概念形成と脳の発達/道具使用と創造の場の拡大

記憶形成のダイナミクス
  井ノ口 馨(富山大学大学院医学薬学研究部)
はじめに/記憶を長期間保存するしくみ/多くの記憶は海馬に蓄えられ他の脳領域へ転送される/生後脳における神経新生の役割/恐怖記憶の測定方法/仮説の実証1/仮説の実証2/仮説の検証3/PTSD発症予防への取り組み/記憶の質/まとめ

● III 章●脳を守る
わが国における多発性硬化症がたどってきた道―新しい疾患概念の確立につながる―
  糸山 泰人((独)国立精神・神経医療研究センター病院)
はじめに/まず、多発性硬化症とはどんな病気?/視神経脊髄型MSと視神経脊髄炎/視神経脊髄型MSと視神経脊髄炎はじつは同じ病気/視神経脊髄型MS/視神経脊髄炎は多発性硬化症とは異なる疾患/視神経脊髄炎は脱髄疾患ではなく、アストロサイト障害という新たな疾患/新たな疾患概念としての視神経脊髄炎と今後の研究方向/疾患概念の確立は新たな治療法の開発につながる/まとめ

トラウマからの回復
  金  吉晴((独)国立精神・神経医療研究センター)
はじめに/トラウマとは/トラウマ症状の発症過程/知覚過敏反応/麻痺反応/トラウマの診断と特徴/侵入症状の鑑別/災害時の精神保健の一般指針/PTSD発症率とトラウマ/救援者のストレス/まず安全・安心・安眠の確保/出来事からPTSDへ/高齢者への対応/PTSDの治療

● IV 章●脳を育む
社会能力発達の発達過程:脳機能画像法によるアプローチ
  定藤 規弘(自然科学研究機構生理学研究所)
向社会行動の神経基盤/脳賦活検査測定の原理/社会能力発達へのアプローチ/向社会行動の動因は何か/ヒト特有の利他性の進化に関する理論的研究/評価は報酬として線条体で処理されているか/動機づけは線条体で処理されているか/社会的報酬と金銭的報酬の違い/脳科学を基盤としたコホート研究の重要性/社会能力に関する発達コホート研究/脳科学情報の扱い方

広汎性発達障害(自閉症)の理解と治療に向けて
  北澤  茂(大阪大学大学院生命機能研究科)
広汎性発達障害(自閉症)とは/自閉症がかつての十倍の頻度で発生/応用行動分析による自閉症の治療/応用行動分析による治療法/応用行動分析治療の結果/応用行動分析治療の客観的評価法の開発/視線の時系列測定/「標準的な見方」からの距離測定/社会性の障害の原因は脳のどこにあるか/長距離線維が不足する一方、短距離線維は過剰/広汎性発達障害の理解と治療に向けて

著者紹介