感染症と病原体 敵を知り、制圧・撲滅でなく、賢く共生!
まえがき

 「風邪? たいしたことないよ!」と気軽にやり過ごします。「えっーコレラ? 怖い! 日本では流行しないよねー」と恐怖と安心感の交雑。「O157で下痢? わー、うつったらどうしよう」と大袈裟に心配します。
 感染症はいつ、どこで、誰が、どうして発症するか、予測ができにくい病気であるだけに、広報される「ニュース」は誇大な影響を与え、「本当の姿」とは「ギャップ」があるように思われます。感染症はある意味では、ごくごくありふれた病気です。
 心臓・血管疾患、代謝性疾患、癌などと次の点で異なります。
  仝彊となる病原体がある
 ◆/佑砲Δ弔
  完全に治すことができる
 ぁ〕祝匹任る
 感染は、自然環境のなかで、病原体とヒトとの生態的共生現象のひとつの形態です。本書ではその視点を踏まえて、病原体は「敵ではない、味方でもないが、仲良く棲み分けよう」と考えます。感染症の原因(病原因子)、うつり方(感染経路、伝播様式)、症状の特徴(病態)、治療方法を知ることで、感染症は個人的および社会的にコントロールできる疾患です。
 感染症は微生物学、免疫学、公衆衛生学、病理学の4分野を踏まえた臨床医学が担当します。この分野から偏りなく難易度をそろえて「感染症」を記述することは難しい作業です。感染症の成書には、一般啓蒙書から専門書まで、難易度もさまざまなものが多数あります。また、インターネットで詳しい最新情報が入手できますし、国内情報および国際的情報は国立感染症研究所などのホームページで容易に、正しく閲覧できるようになっています。
 本書は、この医学の広い範囲にわたる感染症を広く浅く鳥瞰することを目的としました。デパートの地下食品街を歩き、試供サンプルをつまんで味見をするような、そんな気持ちで感染症をナビゲートしました。用語に慣れ親しむこともたいせつで、いろいろな比較表を多用して、重複も多くあります。表層的な記述が多いのはそのためです。
 現在はいわゆる「一般常識」が失われているように思われます。知ろうとすればどんなことでも、いくらでも情報が入手できますが、それを正しく「中庸」に理解することは難しいようで、また、そうすると中途半端な知識という受け取り方をされます。本書は中途半端な知識の断片のようにみえますが、この程度の知識があれば感染症に「惑わされない、だまされない」という範囲の記述をしました。参考文献は一般向けの参考書として代表的な冊子のみを掲載しています。
 本書の上梓にあたっては、クバプロ社長、松田國博氏に「前引き後押し」の絶大な支援とご指導を戴き、編集に際しては多大なご迷惑をおかけしました。ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げ、ここに衷心より感謝の意を表します。