こころを育む脳の働き−育て、守る−2004世界脳週間の講演より−
I.脳とこころの発達
コミュニケーションの発達 名古屋市西部地域療育センター所長/名古屋市立大学医学部小児科非常勤講師(石川 道子)
子どもの脳の障害は、どんなときにわかるのか/精神障害の診断基準/自閉症にはどんなものがあるか/『精神障害の診断と統計マニュアル』の使い方/自閉症の行動形態/一般の人々がコミュニケーションをするとき、どのような能力が必要か/赤ん坊ではどのように、コミュニケーションが発達するか/自閉症の赤ちゃんはどのようにコミュニケーションしていくか/顔をみながら話を処理することが困難/感覚過敏をもつこともひとつの特徴/自閉症の子どものコミュニケーションの特徴と認知特性/自閉症の子どもを、どのように育てていくか
   
乳幼児期の養育環境とこころの発達-分子精神医学という立場から‐ 広島大学大学院医歯薬学総合研究科助教授(森信 繁)
たかがストレス、されどストレス/ストレスによって生体内のホルモンがふえる/環境と脳の発達/母子分離ストレスによって脳の機能も変化する/どうすれば母子分離によるストレス脆弱性が修復されるか/育てる環境で脳の機能は変化する/まとめ
   
児童青年期の心理発達と、遺伝、環境 名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野教授/名古屋市立大学病院こころの医療センターセンター長 (古川 壽亮)
はじめに―氏か育ちか―/何も教えずに子どもを育てたらどうなるか/生活習慣は遺伝するか―双子での研究―/遺伝率とはどんな割合か/知能や性格と遺伝率/環境は子どもを同じにする方向には働かない/遺伝子−環境相互作用/英語教育に遺伝子は関係しているか/母親の愛情と子どもの性格/子どもの適応度と遺伝子/遺伝率は変化する

II. 脳とこころを守る睡眠
脳のかたち、病のかたち―まだまだ分からない脳の不思議― (財)東京都医学研究機構東京都神経科学総合研究所神経病理学研究部門副参事研究員(内原 俊記)
ヒトの脳のかたち、動物の脳のかたち/細胞間の情報伝達の仕組み(内分泌系の場合)/神経細胞に特徴的な情報伝達の仕組み/ニューロンのかたちと数/神経細胞の特徴、肝臓の細胞の特徴/神経系の働き/脳の働きをみる/行動からみた脳の働き/脳のさまざまな変化/脳とコンピュータ/贅沢な脳、壊れやすい脳/神経疾患の治療を目指して/科学のできることできないこと−夏目漱石の言葉−

脳の中の時計と睡眠の夢のような本当の話 熊本大学発生医学研究センター助教授(粂 和彦)
脳のなかの分業/脳の中の小びと/生物時計って、腹時計のこと?/生物時計で季節、時間を測る/さまざまな長さの周期/ヒトの体内時計は何時間周期か/サーカディアン・リズム/体内時計は毎日、調整が必要/なぜ、生物に体内時計は必要なのか/体内時計で季節を知る/体内時計で方角を測る/体内時計はどこにあるのか/体内時計は、細胞時計の集合/体内時計の仕組み―たんぱく質の量で二十四時間周期をつくる/光による体内時計のあわせ方/睡眠のリズムと心地よい目覚め/レム睡眠の不思議/レム睡眠の役割と記憶/体内時計と睡眠の関係/意志の力も重要/早起き早寝で、規則正しい生活を

睡眠の仕組み‐いねむりするのにはわけがある‐ 東京都医学研究機構・東京都精神医学総合研究所睡眠障害研究部門長/副参事研究員(本多 真)
眠りとは何か/夜間睡眠の経過と睡眠段階/睡眠の発達/睡眠を起こす脳の働き/睡眠の起こりやすさを決定する二つの法則/睡眠を引き起こす物質/現代社会と睡眠障害/日中の過剰な眠気を示す主な睡眠障害/ナルコレプシーとその病態/まとめ

III.病から脳を守る
脳の老化を科学のメスで切る‐アルツハイマー病のなぞに取り組む‐ 独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センターアルツハイマー病研究チームチームリーダー(高島 明彦)
アルツハイマー病とはどんな病気か/アルツハイマー病の原因となる危険因子/食事とアルツハイマー病/アルツハイマー病の臨床症状/脳の働き/動物の脳にはない前頭葉/ものをみたときの情報の流れと脳の働き/アルツハイマー病の脳/アルツハイマー病の脳には老人斑ができている/老人斑ができることがアルツハイマー病の原因か/神経原線維変化はどうしてできるのか/老人斑と神経原線維変化の関係/脳の老化を防ぐ方法/GSK3βは寿命に関係している

パーキンソン病の原因と治療をめぐって 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第四部部長(和田 圭司)
パーキンソン病とは/パーキンソン病の症状/パーキンソン病になる人の割合/脳で足りなくなった物質を補給する/新しい脳深部刺激療法/パーキンソン病の根本的な治療法の開発に向けて/パーキンソン病が起こるメカニズムの解明/再生医療に向けて/パーキンソン病の予防と治療