ブレインサイエンス・レビュー2012
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◇はじめに 伊藤 正男((公財)ブレインサイエンス振興財団 理事長) 7 ◇序章 悲劇を乗り越えて 川合 述史(千葉・柏リハビリテーション病院) 13 ◇数理解析による樹状突起分岐ダイナミクスとパターン形成原理の解明 見学 美根子(京都大学 物質−細胞統合システム拠点) 25 はじめに 1)ニューロン樹状突起の分岐パターンの多様性 2)プルキンエ細胞樹状突起 1.培養プルキンエ細胞の樹状突起ダイナミクス 1)長期タイムラプス観察手法 2)ダイナミクスの定量的解析 3)ダイナミクスの攪乱による樹状突起パターンの変化 2.計算機シミュレーションによる樹状突起ダイナミクスの検証 3.小脳皮質内のプルキンエ細胞樹状突起ダイナミクスの観察 4.考 察 ◇シナプスタグ仮説の実証とシナプスタグ機構の意義 岡田 大助(北里大学大学院医療系研究科分子神経生物学、北里大学医学部生化学) 41 はじめに 1.シナプスタグ仮説 1)長期記憶の動態解明と後期可塑性の入力特異性 2)二経路実験 3)シナプスタグ仮説の意義と問題点 2.シナプスタグ仮説の実証 1)作業仮説 2)実験結果 3.シナプスタグの意義 1)シナプスタグの分子機構研究のこれから 2)長期記憶の時間経過を統一的に説明できるか 3)シナプスタグの記憶に対するインパクト ◇神経組織構築を担うタンパク質リン酸化酵素NLKの機能と制御 石谷 太(九州大学生体防御医学研究所細胞統御システム分野) 59 1.NLKの発見 2.NLKはNotch1をリン酸化して神経細胞形成を促進する 1)NLKはNotch1による転写活性化を抑制する 2)NLKはNotch1-ICD転写複合体形成を阻害する 3)NLKはNotchシグナル抑制を介して神経細胞形成を促進する 3. NLKはリチウム感受性キナーゼであり、NGFシグナルの下流でパキシリン、MAP1Bをリン酸化し、神経突起伸長に貢献する 1)NLKはNGFシグナルによって活性化される 2)NLKはパキシリンとMAP1BをNGFシグナルの下流でリン酸化する 3)NLKはリチウム感受性キナーゼである 4)NLKはNGFによって誘導される神経突起伸長に貢献する 4.NLKはホモ2量体を形成し、Thr-286を自己リン酸化することで活性化する 1)MAPKの活性化機構と、MAPKとNLKの構造的差異 2)NLKはホモ2量体を形成し、Thr-286をトランス自己リン酸化する 3)NLKのホモ2量体形成はNLKの核および細胞質への局在に必須である 4)細胞内在性NLKの活性化とホモ2量体形成、Thr-286の自己リン酸化は相関する おわりに ◇哺乳類脊髄神経回路網の作動機序と機能発達 西丸 広史(筑波大学大学院人間総合科学研究科) 83 はじめに 1.哺乳類脊髄における反回抑制回路 2.ラットおよびマウスを用いた反回抑制回路の研究 3.Renshaw細胞活動の興奮性および抑制性シナプス入力による制御 1)Renshaw細胞への興奮性シナプス入力様式 2)Renshaw細胞への抑制性シナプス入力様式 3)歩行運動様リズム活動の際のRenshaw細胞の活動の制御 おわりに ◇触覚システムにおける神経回路の構造と機能:ラットのヒゲ感覚システムを題材として 古田 貴寛(京都大学大学院医学研究科高次脳形態学教室) 107 はじめに 1.ラットヒゲ感覚システムの概要 1)上行性経路 2)皮質内結合 3)下降性経路 4)ヒゲ感覚システムにおけるニューロンの反応特性 2.我々の研究成果:三叉神経核における機構 1)三叉神経核脊髄路核中間亜核の性質 2)中間亜核から主感覚核への抑制性制御 3.我々の研究成果:大脳皮質へ至る経路 1)セプタ領域ニューロンを駆動する経路 2)視床−大脳皮質投射におけるバレル内構築 4.我々の研究成果:大脳皮質から皮質下領域への下降性制御 おわりに ◇強化学習の神経機構 小林 康(大阪大学生命機能研究科、大阪大学社会経済研究所、ATR脳情報研究所、JSTさきがけ) 127 はじめに 背景:運動誤差学習と強化学習 1.脚橋被蓋核に対する古典的理解 2.報酬情報処理と学習におけるPPTNの役割 3.視覚誘導性サッケード課題中のサルPPTNのニューロン活動 3-1)報酬スケジュールの系統的変化が行動に及ぼす影響 3-2)注視刺激点灯時から始まる課題遂行度に依存的な持続的ニューロン活動 3-3)与えられた報酬によって生じる一過性のニューロン活動 4.強化学習におけるPPTNの報酬情報処理機構 4-1)注視刺激点灯直前から始まる、予測報酬量を表現する持続的なニューロン活動 4-2)実際に与えられた報酬量を表現する一過性ニューロン活動 5.DAcellの報酬予測誤差の計算過程 おわりに ◇神経回路網が制御する神経細胞再生機構 井上 武(京都大学大学院理学研究科) 151 はじめに 1.再生能力が高い動物に学ぶ 1)切っても切ってもプラナリア 2)再生能力脊椎動物部門チャンピオン、イモリ 2.プラナリアの脳再生 1)プラナリアの“脳” 2)幹細胞から脳の神経細胞へ 3.神経回路形成後の活動依存的な神経回路の維持機構 1)神経回路ネットワークと神経細胞の維持 2)視神経の活動依存的なシグナルと回路網の再編成 4.イモリの脳再生 5.プラナリアとイモリを用いたドーパミン神経の除去と再生モデルの開発 6.再生能力は下等生物の特権か? ◇野外における行動進化のモデル生物としてのイトヨ 北野 潤(国立遺伝学研究所生態遺伝学研究室) 175 はじめに 1.トゲウオ科魚類のイトヨとは 1)イトヨの行動研究のはじまり 2)形態多様性の生態学と遺伝学 2.イトヨの行動の多様性 3.イトヨの行動の遺伝解析 おわりに ◇多面的脳MRIによる対人行動の障害の研究 山末 英典(東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻精神医学分野) 185 はじめに 1.健常ヒトにおける対人行動の男女差 1)下前頭回弁蓋部体積の男女差と協調性の男女差およびそれらの関係についての検討 2)表情模倣を用いた下前頭回弁蓋部の機能的解析とその男女差、およびその脳機能と協調的人格傾向との関連の検討 2.ASDの対人行動の障害の脳画像研究 1)ASDにおける下前頭回弁蓋部体積が小さいことと社会的コミュニケーションの障害の関連についての検討 2)健常の男女差とASDの所見の類似について 3)ASD当事者における内側前頭前野の機能および代謝の障害 4)ASDの病態における内側前頭前野の関与について 3.統合失調症の対人行動の障害についての脳画像研究 1)下前頭回の形態異常と統合失調症の対人行動の障害 2)統合失調症の下前頭回の障害の機能的関連 3)統合失調症の内側前頭前野の代謝異常 4)統合失調症の脳病態とその形成過程について 4.まとめ ◇線維連絡に基づく他者意図認知の脳基盤 一戸 紀孝(国立精神・神経医療研究センター神経研究所 微細構造研究部) 205 はじめに 1.脳におけるこれまでの一般的な神経回路構造機能連関の研究:カラム、ドメイン、領野 1)大脳皮質カラム 2)機能的ドメイン 3)大脳皮質領野 2.神経回路レベルの構造機能連関研究のツールとしての生体内線維連絡可視化法の開発 1)カラムサイズの注入部位の作成と蛍光でみえる光スポットと逆行性トレーサーとの関係 2)生体内での可視化の確認と、トレーサーの注入と蛍光照射による回路へ与える影響のアッセイ 3.マカクザルを用いた生体内線維連絡可視化法を用いた顔認知の研究 4.マーモセットを用いた生体内線維連絡可視化法を用いた他者意図認知のメカニズムの研究 1)社会脳とは? 2)生体内線維連絡可視化法を用いた社会脳の研究にマーモセットを用いる理由 3)マーモセット線維連絡可視化法による他者意図認知メカニズム研究の現像と展望 ◇精神疾患の体系的トランスレーショナル研究 澤 明(ジョンズホプキンス大学精神医学部門) 223 はじめに いかに精神疾患を医学的に考えていくか:歴史からの考察 精神疾患研究における医学的取り組みの第一歩 精神疾患の分子理解のためのゲートウェー 分子情報から脳回路、表現型へ:時間軸の考察と環境因との相互作用 精神疾患の医学的理解から新しい治療法の開発にむけて おわりに ◇索 引 239 |