アフロ・ユーラシアの考古植物学
序 文 3
細谷 葵

はじめに:本書の目的と構成 4
庄田慎矢


第1章 アフロ・ユーラシアに展開する考古植物学

雑草生態学と穀物の安定同位体分析から復元する西アジア・ヨーロッパの初期都市の農生態系 14
エイミー・ボガード(庄田慎矢訳)
はじめに 14
1. 方法論的背景:「雑草と同位体」アプローチを用いた都市化現象への取り組み 15
2. 北メソポタミア 17
3. クレタ島、クノッソス 23
4. 南西ドイツ 28
5. 結 論 33

アフリカにおけるアジアイネの導入の民族考古学的理解:スワヒリ海岸沿いの農地と調理場から 39
サラ・ウォルショー(表谷静佳・庄田慎矢訳)
はじめに:現在を知り、過去を読み解く民族考古学 39
1. スワヒリ海岸:タンザニア、ペンバ島の古代農業の形態からわいた疑問 41
2. 情報源と研究方法:人々と営み 43
3. 結 果 45
4. 考 察 48
5. 結 論 50

ユーラシア農耕拡散の十字路:ウクライナの新石器〜青銅器時代の栽培穀物 53
遠藤英子
はじめに 53
1. ウクライナ考古植物学の課題 54
2. 現状でのウクライナの栽培穀物出現期−西アジア起源の穀物栽培 55
3. 東アジア起源の栽培穀物 56
4. レプリカ法の手順、種子同定、土器圧痕データの特徴 57
5. まとめ:レプリカ法の可能性と課題 64

経路、季節、料理:コムギとオオムギの東方拡大 68
劉 シン益(庄田慎矢・岡本泰子訳)
はじめに 68
1. 異なるタイミング、異なる経路 69
2. 文書、遺伝子、季節の栽培化 70
3. 甘粛省における食物革命とその後 71
4. 小さな穀粒の長所 73
5. 結 論 74

東南アジアにおける考古植物学 77
クリスティーナ・コボ・カスティヨ(庄田慎矢・遠藤眞子訳)
はじめに 77
1. 穀物栽培の受容 80
2. 拡散経路 80
3. 東南アジア大陸部における穀物類の証拠 82
4. 農業のさらなる発展 89
5. イネだけでなく 90
6. 結 論 92


第2章 中国大陸における過去の植物利用への多角的アプローチ

古デンプンの研究は中国新石器時代の生業パターンの理解をどう変えたか 98
楊 暁燕(庄田慎矢訳)
はじめに 98
1. デンプン粒の物理的・化学的特性と現生標本コレクション 100
2. 中国現生デンプン粒データベース 101
3. 古デンプンの研究は中国新石器時代の生業パターンの理解をどう変えたか 101
4. まとめ 111

石器使用痕から見た新石器時代長江下流域の石製農具と農耕 114
原田 幹
はじめに 114
1. 石器使用痕分析 114
2. 長江下流域の稲作農耕と石製農具 118
3. 収穫具についての検討 119
4. 耕起具か除草具か 126
5. まとめ 131

文献史料からさぐる植物と人の関係史:中国・長江下流におけるヒシ利用の歴史 133
大川裕子
はじめに 133
1. ヒシはどのように利用されたか 133
2. ヒシの品種分類 138
3. 水草による湖の淤塞の問題 142
おわりに 143


第3章 日本における考古植物学の今

縄文時代の狩猟採集社会はなぜ自ら農耕社会へと移行しなかったのか 146
那須浩郎
はじめに 146
1. 縄文時代の栽培植物 146
2. 縄文時代のダイズとアズキ 152
3. 縄文時代のヒエ 155
4. クリの栽培・管理 157
5. 考 察 158

縄文時代に行われていた樹木資源の管理と利用は弥生時代から古墳時代には収奪的利用に変化したのか? 163
能城修一
はじめに 163
1. 検討資料と検討方法 165
2. 結 果 167
3. 考 察 169
4. 結 論 177

土器種実圧痕から見た日本における考古植物学の新展開 180
佐々木由香
はじめに 180
1. 日本における土器圧痕調査 180
2. 種実圧痕の特徴 182
3. 種実圧痕の調査例 183
4. 関東地方における種実圧痕の時期別の植物種 186
おわりに 192

過去の水田稲作を理解するために実験考古学でなにができるか 195
菊地有希子
はじめに 195
1. プロジェクトの目的と課題 195
2. 実験田の赤米栽培 196
3. 実験考古学で検証できる課題 202
おわりに 216


第4章 分子レベルの考古植物学

土器で煮炊きされた植物を見つけ出す考古生化学的試み 220
庄田慎矢
はじめに 220
1. 土器残存脂質分析とは何か 221
2. 土器のなかの植物残滓を求めて 225
3. 初めて土器胎土から見つかったキビの生物指標 227
4. 中国の新石器時代の土器から見つかったデンプン質残滓 228
おわりに 231

イネの栽培化関連形質の評価:植物遺伝学と考古植物学との融和研究 234
石川 亮、杉山昇平、辻村雄紀、沼口孝司、クリスティーナ・コボ・カスティヨ、石井尊生
はじめに 234
1. 穂の開帳性の喪失がイネの栽培化のきっかけとなった可能性 235
2. 種子脱粒性の喪失にかかわった遺伝子座の同定 237
3. イネの栽培化過程の推定 239
おわりに 239

炭化米DNA分析から明らかになった古代東北アジアにおける栽培イネの遺伝的多様性 241
熊谷真彦、庄田慎矢、王 瀝
はじめに 241
1. アジア栽培イネの起源の問題 242
2.考古遺物の分析 244
3. 炭化米DNA分析のためのリファレンス作成−現生イネの多様性を評価する− 246
4. 現生イネ葉緑体DNAの分子系統解析からわかったこと 248
5. 炭化米のDNA分析 250
6. 古DNAから古ゲノミクス研究へ 256