第17回「大学と科学」21世紀に動脈硬化はこうして予防し、こうして治療する
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私たち血管研究者は、この4年間にわたって、動脈硬化のしくみを研究してきました。動脈硬化は、狭心症、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症(ASO)、脳血管障害、腎不全などの原因となり、しばしばヒトの生命をおびやかす血管病です。これら動脈硬化性の病気は、癌と並び日本人の死因の主要な部分を占めます。動脈硬化は正常な血管にいろいろな刺激が加わり、血管がそれに対してさまざまな反応を繰り返しながら、知らず知らずのうちに進行するものです。例えば、水道管を考えてみると、長い間にわたって酸化ストレスをうけた水道管は、やがてその主成分である鉄が“サビ”てぼろぼろになり、水圧の強いところで破裂することがあります。血管も、喫煙、高血圧、高脂血症、糖尿病などにさらされ続けると障害をうけます。初めはその障害を元に戻そうと反応しますが、やがて刺激のほうが強すぎてもはや修復が不可能になります。これが動脈硬化です。 いろいろな刺激(喫煙、高血圧、高脂血症、糖尿病)に対して、血管はどのように反応するのでしょうか?そのような刺激に対し、血管を構成するどのような細胞がどのように反応するのでしょうか?それが分子レベルで解明されれば、それを防ぐ方策を開発することができるはずです。また血管が形成される“しくみ”がわかり、その制御が可能になれば、破壊された血管を再生させることも夢ではないはずです。すでにそのような目的にて、細胞や遺伝子を用いた新しい治療法が開発されつつあります。昨年度には、これらの研究成果を一般に公表する目的で、東京にて公開シンポジウムを開催したところ、多くの聴衆を集め好評を博しました。今回の企画は、急速な発展を続けるこの領域のさらなる最新の知見と、これらの研究成果を基にした最新の臨床応用も含めて、皆様にわかりやすく、その専門家から解説をいただくことを目的としています。多方面からの多くの参加者を期待しています。 |