官衙・集落と土器1−宮都・官衙と土器−
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奈良文化財研究所では、古代官衙と集落に関する研究集会を平成8年から継続しています。この研究集会は、全国の官衙や古代集落に関心のある研究者が一堂に会し、律令国家を構成する様々な遺跡、遺構、遺物を対象に、毎年一つのテーマを設定し、様々な角度から掘り下げる学際的な研究集会です。 今回は「官衙・集落と土器」と題するシリーズを立ち上げ、古代の土器を対象として、複数回に分けて議論を重ねることにしました。官衙遺跡、集落遺跡から普遍的に出土する土器は、年代を測る物差しとしての役割が重視されてきましたが、その生産と流通、消費を通して、遺跡の歴史的な性格や社会の動勢を敏感に反映する遺物として注目されます。遺跡から普遍的に出土し、ありふれた遺物でありながら、当時の国家や社会の関係を紐解く重要な情報を内包する遺物と考えられるのです。 昨年の第18回研究集会では、「宮都・官衙と土器」をテーマに、宮殿や都城、地方官衙から出土する土器に焦点をあて、その器種構成や法量、生産と流通などの分析を通して、遺跡の特性に迫る研究報告がおこなわれました。これにより各地域の研究の到達点が明らかになるとともに、新たな研究視点も提示されました。また討論では、土器から官衙的・国家的な要素を見出すことができるのか、土器からどのように律令国家の動向や在地社会の支配構造を解明することができるのかなど、多くの重要な論点について熱い議論が交わされ、充実した成果を挙げることができました。 この度、その研究成果をまとめた研究報告が完成し、皆様にお届けできる運びとなりました。本書の執筆に当たられました研究報告者をはじめ、研究集会に参加された皆さまに厚く感謝申し上げるとともに、本書が広く活用されますことを期待します。 今後とも古代官衙・集落研究会の活動に対して、皆様のご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 2015年12月 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所長 松村 恵司 |