官衙・集落と土器2―宮都・官衙・集落と土器―
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奈良文化財研究所では、古代官衙と集落に関する研究集会を平成8年から継続しています。この研究集会は、律令国家を構成する様々な遺跡、遺構、遺物を対象に、毎年一つのテーマを設定し、都城、集落とその両者を結ぶ地方官衙の有機的な関係の解明を通して、律令国家の全体像を捉えることを目的としています。全国の官衙や古代集落に関心のある考古学・文献史学・建築史学・歴史地理学など諸分野の研究者が年に一度、一堂に会して熱い議論を交わす学際的な研究集会です。 一昨年より「官衙・集落と土器」に焦点をあて、古代の都城、地方官衙、集落から普遍的に出土する土器を分析の対象として議論を重ねてきました。昨年の第19回研究集会では、「宮都・官衙・集落と土器」をテーマに、各遺跡や遺跡間で土器様相の変化や器種組成の比較分析を通して、土器から遺跡の性格や当時の社会のあり方に迫ろうとする意欲的な研究報告がおこなわれました。討論では、律令国家が成立する時期に各地域で土器様相にどのような変化がみられるのか、土器から官衙的・国家的な要素と集落的な要素を引き出すことができるのか、またそのためにはどのような調査・整理・報告をおこなえばよいのかなど…、長年の課題ともいえる多くの重要な論点について活発な議論が交わされ、充実した成果を挙げることができました。 この度、その研究成果をまとめた研究報告が完成し、皆様にお届けできる運びとなりました。本書の執筆に当たられました研究報告者をはじめ、研究集会に参加された皆さまに厚く感謝申し上げるとともに、本書が広く活用されますことを期待します。 今後とも古代官衙・集落研究会の活動に対して、皆様のご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 2016年12月 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所長 松村 恵司 |