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郡庁域の空間構成
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| 奈良文化財研究所では、古代官衙と集落に関する研究集会を平成８年から継続しています。この研究集会は、全国の官衙や古代集落に関心のある考古学・文献史学・建築史学・歴史地理学など諸分野の研究者が年に一度、一堂に会して熱い議論を交わす学際的な研究集会です。昨年度には20年目という節目の年を迎えることができました。 記念すべき20回目となる研究集会では、「郡庁域の空間構成」に焦点を当て、郡衙（家）、とりわけ郡庁域を対象として議論を重ねることにしました。これまでに「門」（2009年）・「四面廂建物」（2011年）・「長舎」（2013年）といった官衙を構成する各建物の検討をおこなってきました。これらの検討を踏まえ、各建物を群として総合的に捉えることで、郡庁空間の使われ方や性格を再検討してみよう、というのが今回の取り組みでした。 研究集会では、各地域・分野の研究者の報告と議論を通して、郡庁域の建物配置や建物構成の変遷があきらかになり、廂の付加や礎石化といった建物構造の時期的変化や荘厳化、歴史的展開について整理・考察がなされました。討論では、各地域における郡庁の地域性や建物構造の変化、郡庁移転の契機といった地域社会の在り方を考える上での重要な論点が議論され、今後の地方官衙の研究につながる充実した成果をあげることができました。 この度、その研究成果をまとめた研究報告が完成し、皆様にお届けできる運びとなりました。本書の執筆に当たられました研究報告者をはじめ、研究集会に参加された皆さまに厚く感謝申し上げる次第です。 当研究所では、これからも古代官衙・集落から古代国家の様相を探るべく、新たな研究課題を開拓し、全国の研究者の皆様と連携しながら、研究集会を継続していきたいと考えています。 今後とも古代官衙・集落研究会の活動に対して、皆様のご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 2017年12月 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所長 松村 恵司 |