古代集落の構造と変遷4
奈良文化財研究所では、1996年から古代官衙と集落に関する研究集会を継続して実施してきました。この研究集会は、律令国家に関連する様々な遺跡(遺構・遺物)を対象として毎年一つのテーマを設定し、全国の官衙や古代集落に関心のある考古学・文献史学・建築史学・歴史地理学など諸分野の研究者が一堂に会し、学際的な観点から熱い議論を交わす場となっています。
2020年度からは「古代集落を考える」と題するシリーズを立ち上げ、集中的に議論を重ねてきました。古代集落の遺跡は数も多く、膨大な発掘調査の蓄積がある古代集落の検討を通じて、律令国家における在地社会の実像を明らかにすることにより、律令国家や古代社会の歴史的特質を明らかにすることを目指しています。
シリーズ4回目となった昨年度の第27回研究集会では、第26回研究集会で提示された古代集落の基本構造モデルをふまえ、改めて、各地の集落遺跡の事例に基づいて、集落遺跡や建物群の実態を見直す報告がおこなわれました。また、史料にみられる村落や集団と実際の集落遺跡との関係を明らかにすべく、建物面積の定量的な分析による類型化や居住人数の試算といった新たな研究視点が提示されるなど、各研究報告と討議を通じて活発な議論がおこなわれました。
この度、その成果をまとめた研究報告が完成し、皆様にお届けできる運びとなりました。本書の執筆に当たられた研究報告者をはじめ、研究集会に参加されたすべての皆さまに深く感謝申し上げますとともに、本書が広く活用され、今後の新たな調査や研究の展開とその成果の公開・活用に繋がることを心より期待しております。
今後とも、古代官衙・集落研究会の活動に対して、皆様のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2024年12月
独立行政法人国立文化財機構
奈良文化財研究所長
本中 眞