第16回「大学と科学」宇宙からみる地球の姿
特別講演
宇宙から遺跡を捜す
坂田 俊文
財団法人地球科学技術総合推進機構理事長・東海大学教授
はじめに本シンポジウムでのお話はサイエンティフィックなものでしたが、ここで少し視点をかえて、人文科学的な面でとらえると考え方が幅広くなります。私は、宇宙技術を使ってのさまざまな計測・モニタリングに足して、探査することを考えました。探索というと、遭難船など行方不明のものを捜すこともありますが、過去を探ることも可能なのではないかと考えました。現代の技術で過去を探ることを考えると容易ではないと思いますが、地上には何億年、何千万年、何百万年という時間スケールで残されたものがたくさんあります。
地球科学では、残されたものが観測対象になっていますが、ここでいうのは、人間的な意味での歴史的なことです。
記録が残されている歴史を探ることは比較的楽ですが、記録が残されていないものも多くなっています。人類が地球に登場して500 万年といわれていますが、実際に人類が行動を始めたのは氷河期のあった、ここ180 万年ほどです。それ以降、人類は徐々に拡散していきました。ホモ・サピエンスが動きだしてから5万年ほどといわれていますが、大きな痕跡が残っているのは18,000 年ほど前の氷河期です。人類が氷河期に移動したことから考えてみました。
十数年前に、たまたま試みにいっていたことが、いつの間にか“ 宇宙考古学(Space Arch-aeology)という言葉になりました。これについてユネスコでも動きがで始め、この間もイタリアのソレントで会議がありました。その点で、本来やるべき仕事とは少し異なっていますが、別の意味で、宇宙からの技術を応用して夢のあることを考えてみたいと思います。
地球を宇宙からみるコペルニクスによって地球が回転する球体であることが予測されて450 年以上になります。その間、チコ・ブラーエ、ヨハン・ケプラー、ガリレオ・ガリレイ、アイザック・ニュートンなどの科学者たちによって天体の運動が解明されて地動説が確認されました。そして、宇宙から地球をみるという人類の夢が20 世紀になって実現したのです。
人類初めての人工衛星スプートニックは1957 年に宇宙空間に打ち上げられました。人類として地球を外から初めてながめたのはガガーリン宇宙飛行士で「地球は青かった」という歴史に残る言葉を地上の人々に伝えました。
それから44 年、現在では衛星は24 時間常に特別講演 宇宙から遺跡を捜す145 地球全体を監視し、観測が可能になって、地球環境を把握することができるようになっています。
今日まで打ち上げられた人工衛星の数は約5,500 基を超え、撮影された地表の画像は膨大な数になります。この画像は地球のさまざまな状況をあらゆる角度からとらえていて、観測、調査、記録、解析されています。地球全体にわたり地形、地質、植生、温度分布、気象などが画像や非画像のデータとして蓄積されています。特に画像データには自然の姿をある瞬間、凍結した状態で記録保存されています。これらのデータから地球誕生以来の変化の痕跡や大陸大移動、造山運動、火山活動などのさまざまな地球の過去の歴史が推定されます。人類の歴史もあとに残された古代都市や遺跡によって推定されます。宇宙飛行士でなくとも、誰でもが宇宙から地球をみることができ、遺跡を探すことができるようになったのです。(以下本文へ)