第17回「大学と科学」生物多様性の世界−人と自然の共生というパラダイムを目指して
Aセッション●総合講演
生物多様性科学とはなにか、それはどのように進められてきたか
川那部浩哉
はじめに/リオ=デ=ジャネイロでの生物学的多様性に関する議論
生物多様性科学国際計画に対する「共生地球圏:生物多様性を促進する
生態複合」の提案/重点領域研究から創成的基礎研究へ
生物多様性科学国際計画のための西太平洋・アジア地域ネットワーク
なにを、どのように調査するか/おわりに

Bセッション●時間と空間をこえた生物多様性のひろがり
熱帯林の生物多様性─林冠という知られざる世界
中静  透
はじめに:林冠とは/熱帯林の生物多様性/林冠へのアクセス
一斉開花の謎/サラワクでの一斉開花の実態/一斉開花を起こす刺激とは
トリガーは低温か、乾燥か/樹木の貯蔵物質量と一斉開花
一斉結実によって昆虫の種子食を回避できるか/一斉開花によって送粉
効率は上がるか/一斉開花からわかること/林冠のもつ機能
林冠の生物多様性と機能のまとめ

東南アジア最高峰のキナバル山(ボルネオ)における生物多様性と環境 北山 兼弘
キナバル山の環境/多様性と生態系の機能を研究する理由
欧米での研究についての手法と問題点/種の多様性の役割に関する新しい
研究視点/土壌発達にともなう生態系の変化/マレーシアとハワイの
熱帯林比較/標高にともなう植生と生態系の変化/まとめ

世界最大の古代湖─バイカル湖の生物多様性とそのダイナミズム
中西 正己
バイカル湖とは/バイカル湖での調査/バイカル湖の物理構造
バイカル湖沿岸帯・沖帯に棲息する生物の鉛直分布/プランクトンの
分布と鉛直移動/バイカル湖の沖帯の食物網/植物プランクトン群集の
構造と機能/大型植物プランクトンの大増殖/まとめ

Cセッション●生物の多様性が支える生態系の仕組み
河川と森林がつくりだす複合生態システム
村上 正志
河川−森林エコトーンの食物網/河川−森林エコトーンにおける食物網
構造の月変化/落下昆虫の河川食物網への間接効果/まとめ

水の中に広がる微生物世界─そのはたらきと多様性
永田  俊
はじめに/微生物の発見/河川の付着生物群集の観察
琵琶湖の微生物システム/微生物世界の食物連鎖/バクテリアの同定法
新しいバクテリアの分類法/培養しないで微生物を同定する
汽水域におけるバクテリア群集の変化/バクテリア群集の特徴を調べる
究極マシン/まとめ

シンバイオトロンでさぐる環境と生物の相互作用
占部城太郎
はじめに/生物の化学量と物質循環:レッドフィールド比
光−栄養塩バランスと生物の成長/室内および野外実験
生物は環境変化にやられっぱなしか/アクアトロン実験の概要
ミジンコ2 種の動態/協調が自らの餌環境をかえる/まとめ
生物多様性の世界人と自然の共生というパラダイムを目指して

Dセッション●相互作用がうみだす生物の多様なたたずまい
間接相互作用を解読する
大串 隆之
植物と昆虫の相互作用/直接効果と間接効果/陸上生態系における間接効果
植物を介した間接相互作用/相互作用のネットワーク:食物網と相互作用網
生物間相互作用網を生みだす基盤

エコシステムの情報ネットワーク
高林 純示
はじめに/ 3 者系における生物間情報伝達/キャベツをめぐる3 者系
寄生蜂の匂いの利用法/コナガとモンシロチョウの両種食害の場合
コナガとモンシロチョウの間接相互作用/モンシロチョウにとっての
最適空間とは/共通の捕食者の存在について/コナガがモンシロチョウに
与える間接相互作用/おわりに

時を刻むピリオド遺伝子─時間の棲み分けによる多様性の維持機構
清水  勇
体内時計の獲得と生態機能/ミツバチの採餌活動リズム
活動リズムの記録装置/ミツバチの体内時計の特徴/時計遺伝子について
ニホンミツバチのperiod 遺伝子/体内時計を利用した棲み分け機構
ニホンミツバチとセイヨウミツバチの日周活動

Eセッション●どうしたら守れる生物多様性
全生態系保全戦略─九大移転予定地における生物多様性保全事業の挑戦
矢原 徹一
九州大学の移転計画/森林面積を減らさない造成計画/生物多様性保全の
目標とは/森林をいかに保全するか/林床移植地における植生回復
高木移植地における植生回復/植物種の分布の定量的・網羅的調査法
新キャンパス内での絶滅種/復元3 原則/池の引っ越し(水生生物の保全)
里山の生態系の保全/里山の自然を残すためには/人と自然の共生を
実現するためのネットワーク

モンゴル草原における人、自然、社会─生物多様性の利用と持続可能性をめぐって
藤田  昇
モンゴルの遊牧とは/なぜモンゴルの遊牧をとりあげるのか
家畜の摂食と草原の生物多様性、持続的利用/多様性における立地の栄養
条件とグレイジングの影響/生物多様性はなぜたいせつか/根圏土壌での
水の動きと塩分/畑における塩分の集積/裸地の期間と塩分集積
モンゴルの現状と将来/自然の持続的な利用を目指して
地球生態系からみた生物と環境─酸化還元境界層を中心として
和田英太郎

Fセッション●総合討論
人と自然の共生─エコロジーの挑戦
動物と植物の相利共生関係/種子散布者の役割と機能/人間活動の影響が
ないフィールド研究の重要性/科学ジャーナリズムの立場から
種多様性と生態系機能/地球を利用するためのグランドプランの策定を
人間社会と生態系/人と自然が共生するとは/自然とどのようにすれば
共生できるのか/人と自然の共生VS 人の自然への寄生/里山からなにを
学ぶか

Gセッション●まとめ
シンポジウムのまとめ
川那部浩哉
はじめに/「共生」・「共進化」などの言葉/自然のなかで生かされる人間
人間活動を自然の容量限界内で適応させる