第17回「大学と科学」光でナノテク・ナノサイエンス
ナノテクノロジーは21世紀の錬金術
 21世紀型のディスプリンのひとつは、ナノテクノロジーです。ナノの世界では、物理、化学、生物といった個別の学問で考えることはできません。たとえば、DNAは生物の一部ですが、生物学的研究では収まりません。また、DNAとは核酸だから化学であるといっても、化学的考え方では収まりません。これまでの学問分野にとらわれていてはナノのサイエンス、テクノロジーを開拓することは不可能です。ここに、新しいサイエンスを生みだす楽しみがあります。
 DNAは機械(力学)や電気光学としてとらえることもできますし、遺伝情報をコピーすることから情報学で考えることもできます。右回りの2重らせん構造をもつのですから、幾何学として考えることもできます。私たち大学の研究者は今、この新しいサイエンス、ナノテクノロジーに真剣に取り組んでいます。20世紀に生まれた学問体系が崩壊して再構築してできる新しい分野の技術、材料、産業がナノテクノロジーです。
 錬金術とは、銅や鉛から金をつくる技術です。もちろん、それは成功しませんでした。現在の錬金術は化合物半導体です。ガリウムとアルミニウムとヒ素とリンなどを混ぜると、新しい機能が発現します。未来の錬金術はナノレベルで原子配列を制御して、さらに新しい機能を生みだします。きわめて単純な炭素だけでも、ダイヤモンドからフラーレン、C60、カーボンナノチューブ、グラファイトなどができます。ナノテクノロジーは21世紀の錬金術です。