ブレインサイエンス・レビュー2010
はじめに
(財)ブレインサイエンス振興財団理事長 伊藤正男

序章 世界一を目指す研究に
千葉・柏リハビリテーション病院 川合述史

オートファジーによる細胞内分解と神経変性
東京医科歯科大学医歯学総合研究科 水島昇
はじめに:オートファジーとは
1.飢餓に適応するための過剰な自己分解
2.受精卵における母性タンパク質分解
3.定常的オートファジーによる細胞内品質管理
4.ヒト神経変性疾患とオートファジー
5.オートファジーと抗加齢
6.おわりに

神経軸索ガイダンス因子セマフォリンの反発性作用発現における低分子量G タンパク質の役割
京都大学大学院生命科学研究科 生沼泉
1.序論
1)神経回路網形成の過程
2)セマフォリン、プレキシンファミリー
3)低分子量G タンパク質
4)われわれのこれまでの研究の背景
2.研究成果
1)Plexin はR-Ras ファミリーに普遍的なGAP としてはたらくことで、軸索および樹状突起の形態制御を行う
2)Plexin のR-Ras GAP 活性はPlexin サブファミリーに普遍的なメカニズムであり、異なったRnd サブファミリーの機能共役をうける

神経特異的キナーゼCdk5 の神経発達と神経変性への関与
早稲田大学先進理工学部生命医科学科 大島登志男
はじめに
1.Cdk5 の神経発達における役割の解明
2.Cdk5 の脳内基質の探索
3.Cdk5 の神経変性疾患および神経細胞死における役割
おわりに

脳神経幹細胞の未分化性維持機構
熊本大学大学院医学薬学研究部 太田訓正
はじめに
1.今までに明らかになったTsukushi の機能
1)Tsukushi の発見
2)眼の形態形成におけるTsukushi の役割
3)形づくりにおけるTsukushi の役割
4)Tsukushi による神経堤細胞の特異化
2.中枢神経系におけるTsukushi の機能
1)眼におけるTsukushi の役割
2)脳におけるTsukushi の役割
おわりに

神経栄養因子・再生因子による神経疾患の疾患進行・再生の分子機構の解析と適用
大阪大学大学院医学系研究科 船越洋
はじめに
1.末梢神経再生誘導因子
2.人工神経栄養因子による神経再生研究
3.肝細胞増殖因子は新しい神経栄養因子・神経再生因子
4.筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis : ALS)治療研究
1)ALS モデル動物へのHGF の治療効果の解析
2)HGF を用いたALS 治療法(有効な供給方法)の開発研究
5.脊髄損傷治療研究
6.c-Met のセリン残基とチロシン残基の相反的リン酸化はHGF の病態(ALS)依存的なシグナル伝達の効率化に寄与する
7.新しい神経栄養因子・神経再生因子としてのHGF の臨床適用に向けて
8.神経変性疾患の進行抑制研究からreverse 法開発に向けて
− ALS の肝臓はいったん病理学的に変化するが、経時的に回復していく−
おわりに

GABA 神経終末を可視化したマウスの開発
群馬大学大学院医学系研究科 柳川右千夫
はじめに
1.GABA ニューロンをGFP で標識したGAD67-GFP ノックインマウスの作製
2.GAD67-GFP ノックインマウスの解析
3.抑制性ニューロンをVenus 蛍光分子で標識したVGAT-Venus トランスジェニックマウス
4.シナプス前終末を蛍光標識したThy-SpH トランスジェニックマウス
5.GABA 神経終末を標識するマウスの開発と今後の展望

シナプス受容体の膜表面輸送調節機構の解析
京都大学大学院生命科学研究科 森吉弘毅
1.グルタミン酸受容体
2.代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)
3.mGluR1 細胞膜表面輸送の解析
1)mGluR1a とmGluR1b の膜表面輸送
2)mGluR1b の膜表面輸送に及ぼすRRKK クラスターの影響
3)mGluR1aC 末端に存在するRRKK クラスターマスク配列の同定
4)PQ 領域とmGluR1 膜表面輸送
5)mGluR1C 末端が単独でタンパク質の細胞内局在に及ぼす影響
6)神経細胞中でのmGluR1 の局在
4.考察
5.おわりに

ショウジョウバエ視覚中枢の発生メカニズム
金沢大学フロンティアサイエンス機構 佐藤純
はじめに
1.ショウジョウバエ視覚系の構造と機能
2.ショウジョウバエ視覚系の発生
1)視神経細胞の分化
2)視神経軸索の投射によるラミナの分化誘導
3)Retinotopy の分子機構:前後軸方向
4)Retinotopy の分子機構:背腹軸方向
5)Retinotopy の分子機構: superposition
6)メダラ神経細胞の分化
7)メダラへの層特異的投射
8)カラム形成におけるタイリングの制御
9)メダラの発生における同心円ゾーンと細胞移動による神経回路形成機構
おわりに

ショウジョウバエ嗅覚神経回路の発生機構
理化学研究所発生再生科学総合研究センター 浜千尋
はじめに
1.ショウジョウバエ嗅覚系の構造
2.ショウジョウバエ嗅覚系の発生
3.嗅受容体と軸索投射の特異性を結びつける機構
4.嗅覚系の発生を制御する分子機構
1)投射神経細胞の分化を制御する分子
2)嗅覚神経細胞の分化を制御する分子機構
3)軸索投射制御機構
4)Wnt5 シグナルによる嗅覚系の発生機構
まとめ

局所フィールド電位の全脳同時記録
新潟大学大学院医歯学総合研究科 長谷川功
脳の機能地図をめぐる冒険
1.静的な機能地図と動的な相互作用
2.局所フィールド電位
3.網状ECoG 電極の開発
4.ECoG 法と微小電極法を直接比較する動物モデルの開発
おわりに:今後の展望

言語機能の画像化と電気生理学的検証
旭川医科大学脳神経外科 鎌田恭輔
はじめに
非侵襲的脳機能画像法
1)機能MRI(fMRI)
2)脳磁図(magnetoencephalography ; MEG)
3)拡散テンソル画像(Diffusion tensor imaging : DTI)を含む拡散強調画像(Diffusion-weighted imaging : DWI)
非侵襲的脳機能画像の限界とmodality 融合性の重要性
機能画像、機能モニタリング融合の実際
1)fMRI、MEG、皮質電気刺激による言語機能マッピング
2)言語関連tractography(弓状線維)の描出と電気生理学的検証
考察およびまとめ

認知症のトライアングル仮説とコリン作動性ニューロン
慶應義塾大学薬学部 三澤日出巳
はじめに
1.前脳基底部のコリン作動性ニューロンと認知症
2.大脳皮質へのコリン作動性ニューロンの投射と認知機能
3.アルツハイマー病の病状進行にかかわるトライアングル仮説
4.高親和性コリントランスポーター賦活薬の探索
5.ニコチン性アセチルコリン受容体アロステリック・リガンド
おわりに

索引