文化財の保存と修復 12−文化財のまもり手を育てる
開会挨拶
文化財保存修復学会会長 三輪 嘉六
 朝早くからのご出席に深く感謝申し上げます。また、私ども文化財保存修復学会の年を明けての最初の活動でもありますので、改めまして、今年も宜しくお願い申し上げます。
 さて、この公開シンポジウムは前々から進めてきている事業のひとつです。10年前に、「文化財の保存と修復」というテーマで開催して、以来10回続けてまいりましたが、昨年から「文化財をまもる」というテーマにかえ、今回はサブタイトルに「文化財のまもり手を育てる」を掲げて開催させていただきます。
 私は、文化財のまもり手は、基本的には市民だと思っております。やはり、地域にあって、皆さんが、それぞれの分野の自分の好きな文化財に関心を持ってしっかりと対応していくことが、一つの大きな精神的柱となり、やがて社会全体としてみんなでまもるという力に展開していくのだと思っております。
 折しも、私たちが活動していくときに大きなよすがにしております『文化財保護法』が昭和25年(1950)に制定されて、ちょうど60年になります。もちろん、明治30年(1897)以来の制度の延長であるわけですが、戦後、装いをあらたにして『文化財保護法』となって今日に至っていることはご承知のとおりです。そして、これまでは、文化財の世界全体は、どちらかというと保存を中心に考えてきましたが、近年は活用を大きく取り上げています。この流れは、活用によって生ずるリスクをしっかりと処理することのできる、まもり手が存在することによってはじめて成立するというわけです。今その一翼を私どもの学会は担っています。当学会はこれからも文化財の保存、活用に至る展開のなかで、心豊かな社会に向けて少しでも貢献していこうと考えています。
 ちなみに、本学会は昭和8年(1933)にスタートして以降、若干の紆余曲折がありましたが、十数年前に今日の文化財保存修復学会に名称を改め、現在、会員数が1,200名を若干きるほどの規模にまで成長しております。特にここ10年ほどの間に会員は500名ほどふえております。
 日本の文化は、行政的にも文化政策的にも大きく転換して様変わりしていますが、そのなかで文化財の分野は非常な広がりをみせて進歩しております。近年、文化的景観までも文化財の範疇で考えるようになるほどです。このようなさまざまな分野の文化財を支えてきたのが本学会であったと自負しております。そして、もう一つの兄弟の学会である日本文化財科学会と手をむすびあいながら展開をしてきましたし、これからも国内外の文化財の保存・活用に関するさまざまな面で協力をして、いろいろ智恵をだしてまいりたいと考えています。
 本日は、「文化財をまもる―文化財のまもり手を育てる」というテーマで6名の方からご発表をいただき、最後に、締めくくりのパネルディスカッションを行って会を閉じる予定です。この講演会で、いろいろな刺激を得てお帰りいただきたいと思います。また、文化財のまもり手は自分たちだというおおいなる自信をもってお帰りになることを願っております。どうぞよろしくお願いします。